第7話 あの時
「優子!」
学校の階段裏で座って泣いていた。
「優子。大丈夫?隣行くよ?」
まりはそっと優子の隣に座った。日が当たらないこの場所は空気がひんやりとしていてタイルに体温が伝わっていく。
「大丈夫?少しは落ち着いた?」
まりはそっと優子の頭をなでると肩を少し寄せた。
「先輩も優子に立ち直ってほしかったじゃない?人前で話すのが苦手だから」
「でも、それだけは……できない」
「あの時は、しょうがなかったって……」
***
「優子が大勢の前でしゃべらなくなったのは理由があるの」鈴木はゆっくりと話し始めた。
「優子はもともと人前が苦手なほうではあったんだけど、小学校でクラス委員にされたらしくて本人は、何も言わないから……でも優子は弱音を吐かないで続けたんだけど、ある時、入院していたクラスメイトに鶴を折ろうって先生が企画したらしくてその提出日を間違えてしまってクラスメイトに頼んだんだけどだれも相手にしないし先生も優子のやってしまったことなんだからって解決させなかったの。それで、帰りの会で優子が意を決してクラスの前でそのことを話そうとしたんだけどみんなから突き刺さる目が怖くなって倒れてしまったの。それからまりはずっと気にかけて優子のそばにいる。だからこの機会に克服してもらいたかったんだ……」
鈴木としては、まりを自分で締め付けた縛りから、優子はあの時の縛りから、解放してあげたいと思っているのだろ。だけどこれが解決になるとは思えない。
「これが最もいい解決になるとは思えない」
「香口君らしくない」
「もっといい解決は・・・・・