第6話 無言
「あーちゃん!舞台進行任せたよ」
大山は、親指を立て満面の笑みをしたと思ったらすぐさま頬っぺたを机にくっつけた。
「大山先輩?何言ってるんですか!みんなで当番でやっていくんですよ」
鈴木は、満足そうにあっけらかんと笑った。
「私それはできません」
小さく手を挙げながら優子は、恥ずかしそうに言った。
「何言ってるの!優子ならできるって!」
「で、でも、その、先輩やっぱり人前は無理です……」
勢いよく優子は立ち上がると、鈴木の横を通り走り去っていった。
「先輩、いくら何でも言いすぎです。知ってて言っているのなら最低です」
まりは、視線を下に落とし手を軽く握って、優子の後を追い部室を後にした。部室に残された三人はただただ重い空気を吸うばかりだった。
「あーあ。言いすぎちゃった」
鈴木は深いため息をした。
「どうしたら正解なんだろうな」
智樹は、鈴木の目の前に座りながらクレヨンで真っ白だった紙をぬりつぶす。
「そんな知ったこと言わないでよ……」
鈴木は、左手で右手の二の腕をつかみうつむいた。
「よくわからないけど、絶交されるよりは一時的に距離おいただけならまだいいんじゃないか?」
「そういうところ楽観的っていうかポジティブっていうか。なんか実体験もとにしてるような感じね」
鈴木は静かな声でつぶやいた。扇風機は無言の部屋の空気をかき混ぜ続けていた。