第5話 優子の特技
真っ白なB4の紙にクレヨンを使い盛大に塗りつぶしていく。この作業が終わると隣に座るまりが、竹串を使ってひっかいていく。部室には首振り扇風機がせわしなく熱気を振りまく。この作業は、町内会の告知ポスターでもうかれこれ一時間はやっている。
「暑くないですか?どうにかなりませんか?大山先輩」
大山は、机の金属部分に頬を当て突っ伏して寝ている。
「あの、せんぱーい」
大山をゆすりながらまりは、耳元でささやいた。
これでも、かれこれ町内会での夏祭りが一週間に差し迫った。
「そういえば、出店とかどうなっているんでしたっけ?」
まりは、優子の席の隣に座った。
「鈴木がやってくれるんじゃないか?」
「先輩は、鈴木先輩がやってくれるのを待ちすぎだと思います。やはり、こちらから言ったほうがいいと思います」
優子は、クレヨンで紙に塗りつぶしながら言う。
「いやなんの話だよ?!」
「私的に、恋愛小説毎月5冊、一年間に60冊で学んだ。推測です」
「そうですよ、優子はクラスの恋愛マスターなんですから!今月も二件の相談を受けて、一組のカップル成立を果たしたんですから!」
「もう一組どうした」
智樹は、苦笑いしながら顔を向けるとまりは、目をそらし、智樹の口元に手を当てた。
「それは禁句で、暗黙の了解って知らないのですか?」
それ以上踏み込ませないような鋭いまなざしに顔と声があっていない不気味な雰囲気が体を震わせた。
「なになに?なに話しているの?」
不意を衝いて現れたのは紛れもなく鈴木だった。
「今回の出店のもの決まったよ!チョコバナナ店です。それともう一つ、舞台の進行!頼まれちゃった」
一瞬、間があった後部室は、大声でいっぱいになった。