第9話 夏の始まり
ドタバタだった交流会は終わり、夏がやってきた。
ミンミンゼミが部室の外から聞こえてくる。クーラーもないためむんむんとした熱気がたまっている。みんな汗だくになりながら部室に固まる。
「先輩。どうにかなりませんか?生徒会の力を使って!」
まりは、なまけた声で言った。鈴木は、苦笑いをすると顔面を流れる汗をぬぐった。
「大山先輩来ないのですか?」
優子はあたりを見回して言った。
「大山先輩は、受験勉強だよ」
鈴木は、ドアを開けると窓の冊子に手を乗せ青空を仰ぐ。校庭から抜ける風は、まだ心地よく感じられるがそれでも熱気を帯びて蒸し暑い。
「そういえば、なんで集まったんだ?」
智樹の唐突な発言に鈴木ははっとした。
「えっと、なんだっけ?ごめん。忘れちゃった」
「もう、忘れんといて」
部室のドアの後ろから現れたのは、月見だった。
「今日からおせわになんねん!よろしゅうおねがいまっせ」
月見の癖のある関西弁は部室のだらけた雰囲気に勝ろうとしていた。が、いつの間にかに大山先輩が現れてその空気はまた戻ってしまった。
「もう、どうしてこないにやる気ない雰囲気になるんでっか」
不服そうな月見に、レギュラーメンバーは机の冷たい部分顔を伏せてなんとも異様な光景がそこにはあった。
「そうだ思い出した!夏といえば!夏祭り!ってことで、交流会の功績も認められて今度は、夏祭りの屋台出店を任されました」
鈴木は盛り上げるように大きく手をたたいたがさすがに暑さには勝てずすぐに手を止めた。
「具体的に何するの?」
大山先輩は、伏せて枕を抱え込みながら言う。
「それは……みんなで考えてとのことです」
鈴木は、力のない指先で資料を一ページずつめくった。
「アバウトだね……。」
ついに大山先輩は寝てしまった。
「大山先輩寝ちゃいましたよ」
まりはやれやれとあきらめたようで、大山に薄い毛布をかぶせるとまた机に頭を押し付けた。
「じゃあ、今日花火大会しよう!」
「いや何でそうなるんだよ」
智樹の声は部室全体に響き渡った。
「月見さんの歓迎会も含めて」
いきなりやる気を出した、鈴木は部室の奥の棚を漁ると手持ち花火徳用を四袋出した。
「これで、夜プールサイドでやるの。一回やってみたくて」
「いいのか生徒会が」
智樹は不安そうに尋ねたがまりと優子の冷たい視線が向けられると、
「「やります」」
まりと優子は鈴木の人差し指につかまった。
「香口君と月見さんもご一緒にどうぞ」
楽しそうな鈴木の笑顔に押され渋々了承した。
ボランティア部の夏はまだ始まったばかりだ。