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ようこそボランティア部へ  作者: 白石みのり
交流会でボランティア
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第1話 ようこそボランティア部へ

連載第二弾ですが、この小説は、前に途中まで書いたものを載せてます。ゆっくり連載していこうと思ってるので、感想などお願いします!!ツイッターもよろしくお願いします。(@shiraisi_minori)


昼の学校の屋上には、熱く照り付ける太陽が顔を見せては雲に隠れるのを繰り返していた。鈴木杏奈は、屋上の床に座って空を見ていた。その隣には、パックジュースを飲む香口智樹が立っていた。

「今日、雨降ると思うよ」

 鈴木は、空を見ながら言った。

「今日の天気予報は、快晴だ。雨が降るわけないさ」

「そう思う?だったらかけてみない?」

「そんなに自信あんのかよ」

「あるにきまってるでしょ」

「じゃあ何をかける?」

「今日のスイーツ…」

鈴木は、照れくさそうに答えた。

「それはさておき、どうして僕を呼び出したんだ?」

智樹は、どや顔で鈴木のほうを向いた。鈴木は、智樹の対応をスルーして言った。

「笑わないで聞いてほしいの」

「わかった」

「私、半年以内に死ぬの」

智樹は、思わずバックジュースを握りしめ思わず笑ってしまった。

「なんだそりゃ」

「だから笑わないでって言ったじゃん」

「それは無理な話だよ。真面目に言ってるのか?」

「言ってるよ。信じろとは言わないけど」

 鈴木は、立ち上がってフェンスに手をかけすぐさま非常階段の出入り口のドアに手をかけるとすぐさま走り去った。

「変な奴」

 智樹は、その後ろを見送ると後に続いて教室に向かった。

「香口!よっ!どうだった?」

智樹は、席に座って、そっぽを向いた。

「無視すんなよ」

 智樹の隣に中腰に座ってそう言うのは、本元幸人だった。智樹はもともと、友達は少ないほうで目立つような性格ではなかったが幼馴染の幸人がなんやかんやいろいろなことに巻き込ませて目立っていた。

「お前とかかわると悪いことしか起こらない」

 智樹は深くため息をすると、幸人を見た。

「いいじゃないかー幼馴染だろ。幼馴染が絡んで何が悪い」

 幸人は、笑って言った。

「お前じゃなきゃ、別にそうは、言ってない」

「ひどいですな。そんで、今日の昼、鈴木に呼び出されたそうだな」

 智樹は酷くびっくりして顔を赤くしていた。「その様子だとあたりだな」

「なんでお前が知ってるんだ」

「隣の組の花ちゃんに聞いたんだよ。お前がなんか、鈴木に呼ばれたらしいってさ」

「そういう情報収集やめてくれよ…」

 まあいいだろと、幸人は智樹の肩をたたいた。

「鈴木って最近お前と話してなかったよな。

小学校以来か?」

「よく考えてみればおかしいよな」

 そうだ、よりにもよってあまりしゃべってない。しかも、しゃべるのが小学生以来の人にしゃべるなんてなんだかおかしい。

「お前、好かれてるのかもよ」

「は?何言っているんだ好かれてたら…好かれてたら…」

「あらあら顔が赤くなってますよ。まあ、気持ちがわからないわけでもない」

「どういう意味だ」

「だって、あの鈴木だよ。すごいも何も、顔は、かわいいし勉強もできる。おまけに生徒会書記も務めてる。あんな奴が、俺らの前に現れたら…」

 幸人はいつの間にか視界から消えて、目の前に鈴木が現れていた。

「人を幻扱いしてるの?」

「えっ!はえっ!あ、あのいつの間に」

「君たちが、噂してるからでしょ」

「なんでここにいるんだ?隣のクラスだろ」

「さっき言いそびれたことがあるの」

「あのー」

「本木は黙ってて」

鈴木が少し怒っているのを見るのは小学校以来になる。鈴木は、小学5年生の時にこの町に引っ越してきた。最初から、だれとでも仲良くなれるそんな奴だったがそれと同じくらい壁を感じることも多くあまり中学になってからしゃべっていなかった。

「さっきしゃべれなかったこと放課後また話したい。だから、三階の準備室にきてくれない?」

分かったという前に、鈴木はもう教室の後ろのドアのところに立っていた。

        *

 あたりは夕日に包まれて準備室にも暖かな西日が差し込んでいた。もうすぐ中学二回目の夏が来る。

「お待たせ」

 遅れてやってきた鈴木がそこにいた。

「話ってなんだ?」

「香口君は人助け好き?」

 真っ赤に照らされる彼女の顔はまぶしかった。

「人助けは、好きとか嫌いはないと思う。ただやったら自分も幸せな気持ちになるものだと思う」

「香口君らしいね。そういうと思った」

「でもなんで僕なんだ」

「それは…運命なのかもしれない」

 鈴木は下を向いてもう一度前を向いた。

「きっといつかわかる時が来る。だから、君を勧誘しに来たの」

 は?頭の中で勧誘という文字が回った。

「どうしたの?だって、香口君って帰宅部でしょ?だから、わがボランティア部に誘ったの」

「えっ?ちょっと待って。今日屋上で雨が降

る話は?」

「あれは、ほんとだよ。今日中に確かめられるでしょ」

「じゃあ鈴木さんが死ぬ話は?」

「嘘じゃないよ?私もわからないけど」

「そんなあいまいな話信じられるか。」

「わたしは、信じてって言ってない。だから、心の片隅に留めて誰にも言わないで」

「ああ分かった。そのたわごとは置いといて勧誘だな。答えは…ノーだ」

「分かった。けど、明後日活動があるから来てほしいそして、見てほしい」

 鈴木は深く深呼吸をして準備室を出て行った。準備室には沈みかけた太陽が地平線にしがみついているように見えた。その日の夜。雨が降ったのもまた事実だった。

       *

「昨日、部活呼ばれたんだろ。いいよなあ。あのマドンナ鈴木に呼ばれて」

 幸人は、うらやましそうな目をしていた。「よくもないよ。話があるって勧誘だったんだから」

「ボランティア部だろ。最近あそこの部活実績伸ばしてるからな。俺もサッカー部じゃなきゃ入ってるけど」

「それは鈴木さんがいるからだろ」

「ばれたか」

「お前と何年一緒にいると思ってるんだ」

        *

他愛もない話は終わることなく気が付くと放課後になっていた。

「やあ!香口君。よく来てくれたね」

 鈴木は、嬉しそうな笑みを浮かべていた。

「メンバーみんな集まってるよね?」

 準備室のあたりを見回した。

「じゃあ、メンバー紹介しようか。私の後ろにいるのが長瀬まりで、隣にいるのが長瀬優子二人は双子ね。それでこの部の副部長が私で、部長が大山紀里華先輩…」

「もういいよ」

「そう?」

「先輩先輩。その人誰なんですか?」

優子が、鈴木の肩を軽くたたくと鈴木は後ろを向いて、優子にこれまでを説明した。

「ねえ。あーちゃん準備できた?」

 その人が入ってくるだけで、空気が変わった気がした。

「あーちゃん?この人誰?」

 顔を傾げたその人は、近くの椅子の上に腰を下ろすと座って寝てしまった。

「あー寝ちゃった。大山先輩起きてください。今から活動するんですから」

真理が言うと大山先輩は目をこすりながら起きると、またうとうとし始めた。

「先輩。この人は、仮入部の香口智樹君ですよ」

「あっ!例の勧誘したっていう子か…」

大山は、智樹の周りをまわりながらじろじろと見ていた。

「あーちゃんいい感じの子連れてきたね」

「ありがとうございます。先輩」

鈴木は、大山先輩と話し合っていた。

「あのー。すみませんが、これからほんとに何するんですか?」

 それを聞き鈴木は、あわててコピーした紙を配りだした。

「一か月後、学校で交流会があるんだけどね」

「あっ、それ知ってます。高校に、地域の方を呼んで劇とか歌とかクラブの発表とかをするものですよね?」

「よく知ってるね!まりちゃん。そう、その通りそれの管理とかプログラム作りとか企画を学校から依頼されたのです。」

「それで僕は何で勧誘されたんですか?」

それはねと、大山は智樹の近くによるといった。

「やっぱり、ボランティア部には男手が必要だったから…かな?」

「ちょっとためませんでしたか?やっぱり勧誘しなくてもよかったってことじゃないです

か」

「そこまで言ってないよ。香口君」

大山は、笑いながら言っていた。

「どう?この部活に入る気になった?」

鈴木は、言った。

「それはどうかな。」

鈴木はそれを聞いてから、準備室の端にあった段ボールを運び始めた。

「手伝って香口君」

「分かった」

体育館に段ボールを運び終えるとそれを体育館の舞台裏に置いた。

「この中に何が入っているんだ?鈴木」

「香口君は気になる?」

「いや。妙に軽いし」

「この中には、飾りつけの輪飾りと布が入ってるの」

「布?」

そう。と言いながら針と糸をポケットから出してパッチワークを始めた。

「それ、どう使うの?」

「これはね、演劇部の舞台背景」

「演劇部にまで協力してるのか?」

「まあね。ボランティア部ってさ、最初はみんなどこかに居場所を探してた」

「どこかに?」

「そう。大山先輩は、いつも寝てるでしょ?でも、肝心な時には支えてくれるし、それにね、ヒントをくれる」

「ヒントって何のヒント?」

「どうしよもなくなった時のヒント。双子の姉妹もどっちもしっかりしてるけどほんとはどっちも抜けててね…」

最初は、鈴木がただ勧誘しているように見えた。けれどそれは違うのかもしれないとそう思えた。

「どうかした?香口君?」

「いや。何でもない」

「香口君も交流会手伝ってよね。人手不足深刻だから」

「分かってる。仮入部としてやりますよ」

その時、柔らかな空気の流れが彼女の髪をほのかに揺らしその時の鈴木はなぜか遠くに行ってしまいそうに見えた。



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