第16話 女王様
「はぁ〜・・・」
部屋であたしはひとり、ため息をつく。
「今日もひ「お姉さんッ」
バタン!!!
「・・・・・・・・ココ君」
入ってきたのは、綺麗な金髪の猫耳少年だった。うん、あたし慣れた。不法侵入には。・・・うぁ?!ダメだよあたし!こんなのに慣れたらいけません!
「お姉さん、女王様の謁見に行きませんか?」
「あ」
忘れてた。そうか、あたしまだこの国の超権力者、一応ココ君の話から行くとお義母さんとなる人に会ってもいなかった。
「うん、行くよ」
「よかった」
そんなわけで、あたしは今、迷路みたいな廊下を歩いている。
っていうかさ、廊下のいたるところにナッツさんの肖像を掛けないでほしいんだよね・・・!!落ち着かないから・・・!!
あ・・・銅像見っけたかも・・・
「え――――――!!ちょっと!誰?!こんなとこにあたしの銅像置いとくの!?」
いや、気付くのが遅かっただけらしい。
よく見てみれば、よく兜とか鎧が置いてあるところにはぜ〜んぶナッツさんの銅像やら彫像やらがバンバン置いてあって、いやいや、困るからねそういうの。
「遅いですよ、お姉さん。でも、そろそろお母様の書斎に着きました」
「え?!嘘早!」
超早い!っていうか、意外だなあ。もっと城の奥深くとかにあるのかと思ってたのに。
「お母様」
ノックをするココ君。
「入っていいですよ、ココ」
うわ・・・・綺麗な声。透き通るようなメゾソプラノ。聞いててとても気分がよくなる。鈴を転がす、とはこのことなのかな。
キィ・・・ドアをすっと開けてココ君が入る。
続いてあたしも入っていった。
書斎の中央にある椅子に腰掛けていたのは――――。
「・・・・・・・・・・わぁ・・・」
声が、出ない(出てます)。
凄く綺麗。美しい、というか、むしろ可愛いに近い。
銀杏のように丸い瞳はココ君に似たウルトラマリンブルー。つややかでゆるいウェーブを描く長い髪は繊細なレモンイエローペールで、肌は透き通って白に近いシェルピンク。
身長は低めであたしとそんなに変わらないのではないか?(そんなことは有り得ません。本当は155くらい)
どちらかというと女王よりも容姿は姫に近いかな。
可愛く微笑む小振りでライトマゼンタ・カラーの口元は彼女の可愛さをよりいっそう引き立てて―――って!
なにこんな行数使って女王様の説明してんの!?おかしい!
「可愛い、ですね」
「なに―――――」
え?今、この人あたしの事可愛いとか言った?え?!いやいや、貴女の方が何万倍、いやなん億倍も可愛いから!えー、ちょちょちょちょっと、マジで常識無!
「ピンクマダーの真ん丸の目元、健康的なジョーンブリアンの肌、薄いローズバイオレットの髪の毛・・・うん、気に入りました。わたくしより可愛い人はいないけど、そうね、世界で二番目に可愛いです」
・・・・・・・・・・・・・・・ん?
今この人なんつった?
ワ タ ク シ ヨ リ カ ワ イ イ ヒ ト ハ イ ナ イ ケ ド
え、まてまて、脳内の整理させて!いや、うん、これはもう妄想の範疇ということで構いませんよ!あたしは構わないから!って言うかほっといてくれェェェェェ!
「え、えと、ありがとうございます」
「嫌ですよ、もう。わたくしに敬語なんて要りません」
現にあなたが使っているのに。
「わたくしのことはベリーと呼んでください。あなたは・・・紅誇、でいいかしら?」
「え、は、う、うん。えっと、ベリー」
「フフ、可愛い。紅誇、これからはずっと一緒よ?帰れないしね、貴女は」
帰れない。
そうか。あたしはそういえば、逃げ道がないんだ。
帰れる家がないっていうのは、こんなに不安なのかな。
「なんていうか、標本にしたいくらい可愛い」
感傷的な気分をぶち壊すベリーの言葉が・・・!
「ッギャァァァァァァ!いや、マジでやめてください!でかい画鋲とか持って追い回さないでね?!」
「え?それってこれのこと?」
女王様がどこからともなく出したものは、超巨大な細く怪しく光煌く金色の画鋲。優にあたしの身長くらいはありそうな――――
「怖ッ!っていうか何でそんな危険な物体を持ってるんです?!塩酸で溶かす実験に使うよ!えー、うわ、だから危ない!きゃー!!振り回すな―――!!!」
「うふふー、凄く可愛いー♪あなたもそう思いませんこと、ココ?」
「ヤバイです、お母様!危ないですから!!」
よし、その調子だ、ココ君!
「何言ってるの?いつものお茶目な冗談です〜♪」
「お茶目じゃない!!!」
え、マトモだよね?このツッコミ、マトモだよね?!
「あらなんで?たのしいじゃない」
「怖かった!心肺停止で死にますから!夜とかこっそり入ってきて朝になったら剥製とかやめてくださいよ!?燻製も嫌ですから!!」
「あら、それいいですねー★」
「にゃー!?」
「冗談〜〜♪」
「お母様、マジでやめてください・・・・」
「あら、ココまで面白くない・・・もっとお茶目なのにした方がよかったかしら・・・?」
「ベリー、我が家に帰らせていただきますねッ☆」
「え?だから帰れないですから。」
「やめてもらわないとあたしの命が帰れない!!!」
うわー、チョー危険だよ。マジでやばいから!何なのこの国!ってか、女王様これで国の運営ちゃんとできてんの?!
「また遊びに来てくださいね、紅誇!今度はもっと楽しい冗談を考えて待っていますから〜♪」
「一生来ないことを胸に誓います」
女王様の紹介は、次回あたり書こうと思います。