第9話 散々な一日
朝っぱらの出来事です。
ひさびさにアイツがでます!
「暇〜〜暇〜〜暇〜〜」
恐ろしく暇。
昨日とかはちゃんとホームパーティにも行ったし結構充実してたのに。
あたしはぶつぶつ呟いて「暇〜〜」を繰り返す。
「暇だなぁ〜〜・・・」
「そんなに暇なら、俺と遊びにでも行こうよ」
「え」
あたし一人しかいないはずの大きな部屋。
そのどこかから聞き覚えのある声がする。
「ココ君・・・じゃないよな。アーモンドでもない。ていうか、何処にいるわけ?えぇっと、この声は・・・」
「潤風」
「そうっ、それ!!」
「出てないからって忘れるなんてひどいね、紅誇」
すた。
目の前(てか、あたしの上)にひさびさに出番の来た潤風が現れる。
「ギャアァァァァ!!どっから湧いてきた?!ていうか不法侵入なんじゃッ・・・・!」
えだって、この城の整備はどうなってる?なんでこの一回しか面識のない狼男が何処からともなく湧いてくるんだ!
「おチビさ「チビって言うな!」ん♪俺は天井にくっついてたよ」
思いっきりあたしの訴えシカトしたぞこいつ!
しかもなんつった今この狼男!え?天井に?嘘!おかしいんじゃないの?!
「・・・・・・・」
「ん?どうしたの紅誇。元気ないね」
一気に布団に倒れこんだあたしを見て潤風が言う。
元気ないですよ。あんたのせいで。
なんでこんな一気に疲れなきゃいけないの。まだ朝の8時とかなんだよ?
・・・しかもこいつはいまだにあたしの上から退こうとしないわけ?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・重い」
「俺が?」
さも意外そうに彼は言う。
「あたしの約二倍も体重があるのに俺が?とか聞くな。しかも重いから、マジで」
と、そのとき、ギギギ、とスプリングが軋む。
でも一向に軽くなる気配はない。
「ちょっと、早く退い・・・」
・・・言い終われなかった。
あたしが上を向いた瞬間、彼はあたしに猿轡をかました!
「んがッ!!!!」
「ごめんね。息を吸って」
言われる前にすっていた。
ヤバイ。そう思ったときにはもう遅くて、だんだん意識が遠のいていくのを感じる。
・・・・・あのやろう。猿轡に薬を染み込ませたな・・・
そう最後に思って、あたしは完全に気を失った。
☆★☆
「んむ・・・・」
あたしが目を覚ましたとき、そこは見たこともない湖のほとりだった。
「にゃろう・・・」
ふつふつと怒りが込み上げてくる。
ちょっと。あたしの家、何処?!
その前に、ここは何処なのよ?!
「コーコーく〜〜〜ん!!!」
大声で呼んでもいるはずもなく。
「酷いね。俺がこのロマンチックな場所につれてきてあげたのに他の人を呼ぶんだ?」
「頼んだ覚えはない!!しかも今のは連れてきたというかどう考えても誘拐だぞ!」
いきなり聞こえた声に反射的に怒鳴る。いや、いいのさ、相手は潤風なんだから。もしそれが勘違いでココ君とかだったら申し訳なさすぎて土下座しようとも思うけど。
しかし当の潤風は無邪気な顔で首をかしげている。
「なんで?この湖にはピラニアとか大海蛇とかカンディルとかウーパールーパーとかいっぱいいるのに」
「どこがロマンチックだこのアホ!捕食されるぞお前!しかもピラニアとかの中にウーパールーパーを入れるなぁぁぁ!!」
大丈夫かこいつの頭。
いい加減心配になってくる。こいつが海蛇とかの中にジャッポーンと飛び込んで食われたら、あたしはどうやって帰ったらいいの?
「何言ってるの?そういうののなかに飛び込んでいって、捕食するのは俺」
・・・え?
なんていった今?
捕食する?生で?
「何言ってるのはこっちのセリフだァァァァァァァ!!!!!!!!」
理性がもう限度を超してて、あたしはバイオレンスに潤風にとび蹴りをした。
「っつぅ・・・飛び蹴りはないだろ、紅誇・・・・・」
「生きてたぁ―――――!!!どうか捕食されてくださぁぁぁい!!!!あたし帰れなくてもいいからこの不気味な生き物に制裁を〜〜〜!!!!!」
怖い怖い怖い怖い怖い、いやだから怖すぎるって!!
と。
その間にいつの間にか彼はあたしの後ろに回りこんでいたらしい。
「えい」
トン。
「ッギャァァァァァァアアアア!!!!!!!!」
気付けば目の前には水面が迫る!!
後ろに行って水際に立ってたあたしを押したな悪魔の子供!!!!信じらんないピラニアに食われるだろボケェェェ!覚えてろよこの狼男地獄で後悔させてやる!!!!
「な?捕食できるでしょ♪あでも、慣れてないからお姫様は捕食されちゃうほうか!!ま、いっか♪」
絶対こいつあたしのこと姫とか思ってないよ!第一人とも思ってないよ多分!ま、いっかってどういう意味〜!?
「100回くらい捕食されろこのバカ狼――――――――!!!!」
水面が目前に迫り来ていた。
お父さんが目の前に出てきた微笑みながら言う。
『紅誇、いい人生で終われたかい?』
正直散々でした。
脳内では”THE END”の文字がくっきりと浮かんできました。ああもう、ダメなのか――――。
もうダメ、落ちる―――!
と思った瞬間、ふわりと身体が浮いた。
「た、助かった・・・?」
いったい何がおきたんだろう。
痛みもないし、水の冷たさも感じない。
まさかあたし、もう死んでるの―――?
「お姉さん」
「え・・・」
目を開けてみたら、そこには愛しいあの少年の姿が!
「ゆ、夢・・・?」
「違います。間一髪で僕が水面からお姉さんを救い出しました」
よく見てみたらあたし、ココ君にお姫様抱っこされてる。
「無事でよかった」
にこりと天使の微笑みを浮かべた彼は、あたしの頬にちゅっとキスをしてくれた。
「いくら潤風さんとはいえ、今回のことについては許しがたいですね」
キッと潤風の方を見たココ君は、蒼い瞳に静かな怒りの炎をメラメラ燃やしていた。
「どうすんの、王子。俺を処刑してみる?」
「確かにそれは面倒くさいでしょう。ですから今回だけは許します」
「許すのぉ?!」
驚愕。おねがい、このクレイジーな狼野郎を征伐してください!
「ですが、次回は許しません。これ以上お姉さんに変なことをしたら、僕が自ら攻撃しますよ」
「はいはい、王子様。面倒くさいから今回は退散するよ。次回もよろしく、aid prince」
そういってクレイジー狼野郎は消えてしまった。
「ねぇ、攻撃するって何?」
「教えません」
「何なの?!」
「秘密ですよ」
どうしても気になったあの言葉。
訳が分かるのはあまり遠くありませんでした・・・
潤風、酷いですね!!!いくら紅誇だからって突き落とすなんて(どういう意味だおい作者:紅誇)!
ピラニアとか大海蛇とかがいっぱいいるのに!!!
またもやココは王子様風貌でした。たまにはヘナチョコも書かないと、ココにキザ王子のレッテルが貼られそう・・・(困