表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

梓沢緋里は落ちこぼれではいられない(1)

 男女4人のしずまることのない笑い声に包まれながら、優馬は後悔という名のおもしによって深くしずんでいた。



「あはははは。あんた、本当にアホね。際限さいないアホだわ」


 緋里が笑顔を見るのはこれが初めてだった。

 普段の仏頂面ぶっちょうづらとのギャップにときめくことがなかったのかと言われればうそになる。とはいえ、優馬がコケにされているだけである以上、笑顔が見られても全く嬉しくはない。



「『女湯を覗きたい』とは傑作けっさくっすね。ハッハッハ」


 自分もそれなりに痛い能力を持っていることをたなに上げ、紹也が手を叩きながら笑っている。

 能力を授かった動機はできれば話したくなかったが、首が伸びるという奇怪きかいな能力を手に入れた説明するには、どうしても正直に本当のことを話すしかなかった。



「クックックック…」


 通洋が手で口を押さえて、必死で笑いをこらえている。地味に傷ついた。



「優馬さんって、面白い方なんですね。うふふ」

 

 かなり傷ついた。

 せめて美衣愛にだけにはカッコつけていたかった。ムッツリスケベだなんて美衣愛に思われた日には、この世の終わりである。




「みんないつまで笑ってるんだよ! もういいだろ!」

 

 1分間以上続いた苦痛な時間に耐えられなくなった優馬が、ついに声をあららげる。



「はぁ苦しい。はぁ…」

 

 そう言った後、呼吸を整え始めたのは、誰よりも抱腹絶倒ほうふくぜっとうだった緋里だった。



「みんな、そろそろ真面目に考えよう」


 「覗き魔が真面目ぶるなって」という小言が紹也あたりから聞こえてきたのを無視しつつ、優馬は続ける。



「18時をかなり過ぎた。でも、神様は未だに来ない。これは一体どういうことなんだ?」


「そもそも本当に神様は来るんですかね?」


 美衣愛が口にした疑問は、まさに優馬もいだき始めていたものだった。

 

 それは緋里も同じだったようで、案内状を開きながら付言ふげんする。



「案内状には、18時にここに来るように、とは書いてあるけど、それ以上のことは何も書いてないわ。つまり、神様が来るだなんて一言も書いてない」


「じゃあ、神様はなんのために俺らをこの会議室に集めたんだ? あまりにも無責任じゃないか?」


「あんただって身にみて分かってんでしょ。神様がものすごく無責任な奴だってこと」


「それはそうだけど…」


「俺、思うんっすけど」


 紹也が口を挟む。



「この5人が会議室に集められたということ、それ自体に意味があるんじゃないっすか?」


「どういう意味なの?」


「神様の目的はもうこれで尽きてるっていう意味っす。神様の目的はこの会議室に俺たち『落ちこぼれ』を集めることだった…」


「『落ちこぼれ』ってどういうことよ!?」

 

 緋里が噛みついた。

 医師の卵としてエリート街道を突き進む緋里にとって、「落ちこぼれ」というレッテルは受け入れがたいものなのだろう。



「きっと9年11月前、神様から能力をもらった14歳は他にもたくさんいたんっすよ。だけど、大半はちゃんと使える能力を選択して、さっさと人命救助のタスクをサッサと済ませてるんっす。他方、俺たちは能力のチョイスを誤り、9年11ヶ月もタスクをこなせずにいる『落ちこぼれ』なんっすよ」


「…随分ずいぶん理不尽りふじんね」


 たしかに理不尽である。

 しかし、神様がここに集められた5人を「落ちこぼれ」だと認識していることには、たしかな根拠がある。

 

 紹也からのバトンを優馬が引きぐ。



「みんな、この会議室の予約団体名を思い出してくれ。203号室を予約していたのは何という団体名だったのか」


 誰も答えなかった。

 仕方ないので優馬自身が答える。



「ポンコツヒーローズ」



 この予約名に、神様が5人をどのように見ているかが露骨ろこつに現れている。

 14年前、神様は、優馬のことを「特別な力を持ったヒーロー」だと言った。きっと同じことを他の4人にも言っているだろう。

 つまり、5人は、人命救助を使命とした「ヒーロー」に任命されたのである。


 しかし、5人は神様の期待を見事に裏切っている。

 5人は、ヒーローとしての使命を果たせない「落ちこぼれ」、すなわち、「ポンコツ」なのである。

 

 

さらに、ここに集まった5人は、みんな「ポンコツ」であることを自覚している。

 そうでなければ、「ポンコツヒーローズ」名義で予約された203号室にみずから足を運ばないだろう。

 案内状には予約団体名も部屋番号も書かれていなかったのだから。


 結局、最初の会議室から出ることすらないままGWが終わってしまいましたorz


 責任を持って完結させますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。


 ptやブクマを下さった方には心より感謝申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ