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ポンコツヒーローズ  作者: 菱川あいず
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11/20

四元美衣愛は常にお腹が減っている

 思い通りに早起きができず、ホテルの朝食を食べそこねるということは、決して珍しいことではない。


 しかし、朝食の時間にちゃんと食堂におもむいたのにもかかわらず、朝食にありつけないことは滅多めったにない経験だろう。



「あ、優馬さん、ごめんなさい。私、もう優馬さんは朝食を食べたと思ってて…本当にごめんなさい…」


 「CLOSED」と書かれている看板の前で、なぜ美衣愛に平謝ひらあやまりされているのかが、優馬にはよく理解ができなかった。



「…美衣愛ちゃん、どうして謝ってるの?」


「私、つい食べ過ぎちゃって…」


「え? まさか、朝食のバイキングを全部食べちゃったの?」


「ごめんなさい…」


 マジかよ。バケモノかよ…

 

 …いや、そんなの悪い冗談に決まっている。

 美衣愛の隣でポッカリと口を開けている紹也に、優馬は問う。



「美衣愛ちゃん、本当に朝食のバイキングを空にしたの?」


「この世のものとは思えない光景だったっす。食べたというか、流し込んだというか、飲み尽くしたというか…」

 

 紹也は、美衣愛の食べっぷりをまるで洪水こうずい被害を語るのかのごとく表現した。

 この表現がさして大袈裟おおげさでないことは、通洋が繰り返し頷いていることから裏付けられた。



「ごめんなさい。私、一旦食べ物を口に入れ始めると止まらなくて…」



 美衣愛は本当に反省しているようで、だいぶちぢこまっている。


「美衣愛ちゃん、そんなに謝らなくていいよ。俺、普段から朝食抜くこと多いから」


「優馬さんってお優しいんですね」

 

 なんたる殺し文句。

 美衣愛からその一言をもらえるんだったら、優馬は、仮に美衣愛に自分の内臓を食べられたとしても文句は言わない。



「それより、美衣愛ちゃんの能力ってスイーツ限定じゃないんだね」


「そうなんです。神様には『甘いものをいくら食べてもお腹いっぱいならないようにして欲しい』って頼んだんですけど、実際にもらえた能力は、何を食べてもお腹いっぱいにならない能力でした」


 神様にオーダーした能力と実際に与えられる能力との間には微妙なズレがあるということか。

 冷静に考えると、優馬だって別に「首が自由自在に伸びる能力が欲しい」と頼んだわけではない。

 「女湯を覗きたい」と頼んだら、神様が勝手に「首が自由自在に伸びる能力」を見繕みつくろっただけである。



「なので、私、常にお腹が減ってるんです」


 美衣愛が小さく舌を出す。


 めちゃくちゃ可愛eeeeeeeeeeeeeeee!!


 美衣愛と結婚したい。異常な数値のエンゲル係数で家計が逼迫ひっぱくしても構わない。



「美衣愛ちゃんって、超スリムっすよね。あんなに食べるのに」


 紹也が美衣愛のお腹の辺りに目をる。たしかに美衣愛のお腹はスッキリとへこんでいて、ホテル宿泊者全員分の朝食が丸ごと入っているとは到底思えない。腕も脚も海外のモデルのように細い。むしろ「ちゃんと食べてるか?」と心配する人がいてもおかしくない。



「そうなんです。私、いくら食べても太らないんです」


「でも、食べてるんっすから、当然おつうじの量はアレっすよね? 美衣愛ちゃん、お通じは?」


 紹也が無粋ぶすい過ぎる質問をした。

 

 こいつ、何くだらない質問してるんだ? 

 

 アイドルはう◯こしないんだから、美衣愛だってう◯こするはずないだろ。


 優馬が期待した通り、美衣愛は堂々と胸を張って答えた。



「しません」


 ほらね。


「ヒロイン可愛eeeeeeeee」系小説という新たなジャンルを切り拓こうかと。

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