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「あ、朝斗さんっ!」
(いつの間に…っ!というか、いつからそこに…っ?)
「優妃、また何か言われてた?」
私の肩を抱き寄せながら、一琉を睨み付けて朝斗さんが言う。
「いえ、何も!一琉、じゃあね」
一琉が口を開いて事態が悪化する前に、私はその場から強引に朝斗さんを引き離す。
「え、ちょっと優妃?」
バタンと玄関のドアを閉めて、一琉から引き離せたことに安堵していたところで――――。
「…―――どちら様?」
玄関の前までやってきて呆然と立ち尽くしていた母が私に訊ねた。
(あぁっ?!私、焦って家の中に朝斗さんを…―――っ!)
気が付いた時には、母と朝斗さんはお互い目があったままフリーズしていた。
(どどどどうしよう…何も考えてなかったー!)
「突然お邪魔してすみません。優妃さんと同じ高校の二年で、早馬朝斗と言います。初めまして…。」
パニックになる私の隣で、朝斗さんがペコッと礼儀正しくお辞儀して完璧な王子様スマイルを浮かべる。
「優妃さんとは、お付き合いさせていただいて…「あーっと、朝斗さん、挨拶なんて良いですからどうぞ上がってくださいぃ!!」
堪らなく恥ずかしくなって、私はつい朝斗さんが言い終わらないうちにグイグイと二階へ向かうように背中を押す。
「ちょっと優妃っ?」
母が驚いたように私に声をかけたが、私はそれどころじゃない。
「お母さん、後にしてっ」
(お願いだから、いまは何も言わないでっ)
私は母にそう涙目で訴えながら、二階の自室へと向かう。
「早馬くん、ごゆっくり。」
とりあえずニコッと笑顔で対処する辺り、母は大人だなぁと感心してしまった。
バタンッと勢いよく自分の部屋に入りドアを閉めて、私はすぐに頭を下げた。
「朝斗さんっ、すみません突然…!」
「良いけど…。まさか家に入れて貰えると思わなかったから驚いた」
(あぁ~っ、ですよね!!)
自分の考えなしの行動に、心から反省する。
「本当にごめんなさいっ」
もう一度謝っていたら、自分の馬鹿さが情けなくて目が潤んできた。
「母に挨拶までさせてしまって本当にすみませんっ。」
「挨拶するのは当然だろ?付き合ってるわけだし」
(付き合ってる…)
朝斗さんにそう言われると、なんだか照れてしまう。
「……そう、…ですけど…」
「俺じゃ不満だった?」
「そんなわけないじゃないですか!」
(不満だなんて、何一つ無いですよ!)
私が全力でそう言うと、朝斗さんがクスッと笑った。
「良かった、優妃のお母さんに挨拶出来て」
私の頭をポンと優しく撫でる。
「それに、優妃の部屋にまで入れたし、」
私の頬を、優しく撫でる。
「疲れも吹っ飛ぶくらい、嬉しいよ」
「朝斗さ…」
私の身体を自分の胸の中へと引き寄せる。
「優妃とこうしてると、すごく癒される」
私を抱き締めて、朝斗さんがそっと囁いた。
「ほ…本当ですか?」
(こんな私でも…貴方の役に立ててるんですか?)
ドキドキが止まらないし、頭もグルグルしてきてたけど、私は朝斗さんの役に立てて嬉しかった。
「本当」
耳元で、朝斗さんが囁いた。
「ずっと、こうしてたいぐらい」
(やっぱり、心臓が持たない気がしてきたー――…)




