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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十五章【文化祭までのカウントダウン】
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「あれ?優妃ちゃん」

「あ、琳護先輩!」


作業を終えて、家庭科室の鍵を閉めたところで、廊下で琳護先輩に会った。


「朝斗と仲直りできてよかったね」

「あ、その節は…ありがとうございました」


「あいつ素直じゃねーし、プライド高いし、また色々あるかもだけど、見捨てないでやってなー」


「見捨てるだなんて、むしろ私の方が…」

いつ捨てられるか…ヒヤヒヤモンです…なんてネガティブな発言は、きっと琳護先輩に聞かせるべきではない。この人にはずっと明るい笑顔でいて欲しいから。


「恋愛は初心者だからさぁ、あいつ」

何を思い出したのか、クスクス笑いながら琳護先輩が言う。


「へ?」

(初心者?朝斗さんが?)

朝斗さんには似つかわしくない言葉に、私はキョトンとしてしまう。


「あー、女はいたけどさ。好きとかそんな感情なんて無かったし。まぁあの見た目だからそれでも良いって女は絶えないし、それで余計にスレちゃって」


琳護先輩は、苦笑しながら説明してくれる。


「でも、優妃ちゃんに出会って人間らしくなったんだ。―――良かったわぁ、マジで。あいつのこと心配だったからさ」


「―――わ、私…は何も…」

そんな風に言って貰えると、嬉しくて口元が緩んでしまう。


「あ、ヤバい。こんなところ朝斗にバレたら絞められるな。俺行かないと。」

私の後ろに視線を向けながら、琳護先輩が言う。


「じゃあな」

「あ、お仕事頑張ってください…っ」

にこやかに手を振りながら行ってしまう琳護先輩を見ていたら、一護くんの存在(こと)を思い出してしまった。


(兄弟だから…似てるのは仕方ないんだろうけど)


私が向き合うべきは朝斗さんだからと、教室でも、また一護くんのことを見ないようにしてきた。

これが正解だとは思えないけど…、でも私と関わったら一護くんを傷付けてしまうと翠ちゃんにも言われているから…こうするしかなかった。


(本当は、一琉の時みたいに…ちゃんと話したいんだけど…)


話して、向き合って、お互いの関係をどうにか出来ないのか。

(でもそれって、ただの…私の自己満足だよね…)


一護くんから話しかけられない限り、私から話すことはもう無いんだなと思ったら、悲しくなる。


(難しいな…)



「お待たせ、」

翠ちゃんが、職員室から用事を済ませて帰ってきた。

「琳護くんと優妃、仲良くなったんだね」

並んで昇降口へと歩きながら、 翠ちゃんが言う。


「あ、翠ちゃんも琳護先輩のこと知ってるんだ?」

「うん知ってるよ、同じ中学だし」

「あ、そっか。」

(翠ちゃん、一護くんと…同じなんだもんね…)


「―――イイ人だよね、琳護先輩って」

私がしみじみとそう言うと、翠ちゃんが少し間をあけて答えた。


「うん、そうだね…」

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