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「本当ごめんなさい…」
座れるところを探して、時田くんと暫く座っていた。かなり時間が経ったからか、人混みも少しずつ緩和されていく。
「気にすんな!ってか、さっきから謝り過ぎだから」
私が頭を下げて謝ると、時田くんが笑う。
先ほどから、申し訳なさからつい謝ってばかりいるからだ。
でも、私が言いたかったのは他のことだった。
今なら素直に話せる気がした。
「―――靴擦れのことも…だけど。…私、時田くんのこと誤解してた」
「あ゛?」
「時田くん、クラスの中心にいるからか、ちょっと怖くて苦手だなって…」
「…俺のこと、怖かったのか?」
時田くんの声が少し低い。もしかしたら言い方が悪くて傷付けたのかもしれない。
「ごめんね、それは私の勝手な先入観で…。でも今日、印象が変わったから」
私は不器用だから上手く言えないけれど、
でも、これだけは伝えたかった。
「時田くんがどうしてクラスの中心にいるのか分かったっていうか。優しいんだなって、分かって」
「あのさ、」
私が一気に話していると、時田くんが口元を手で押さえながら待ったをかけた。
「?」
「“一護”でいいよ」
時田くんが照れながら、言った。
「俺も、“優妃”って呼ぶし」
「あ、はい…」
照れが伝染したように、私も頬が熱くなる。
「“はい”って、可笑しいから」
一護くんが笑う。よく笑う人だな。
「――――ありがとう、一護くん」
私はつられて笑いながら、一護くんに言う。
「私、今日、花火大会に来て良かった」
「俺も!」
身を乗り出すように、一護くんが勢いよく私に顔を向ける。
「優妃と花火大会来れて、良かった」
(うわ…!)
なんだかその言葉が、私の胸の奥を熱くした。