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ピロンとlineの着信音が鳴った。
『優妃、風邪?大丈夫?』
翠ちゃんから届いたlineを見て、返信せずにベッドの横に置く。
今日、私は学校を休んでいた。時刻は8時30分。
もう少しで朝のホームルームが始まるはずだ。
今朝起きた時から高熱が出ていた私は、そのまま学校を休むことにした。
身体がだるくて、ベッドから起き上がれない。
でもlineの返信をしなかったのは、決して身体がだるいせいじゃない。
(まるで、ずる休みだ…―――)
学校では今頃、私は朝斗さんと別れたという話が広まっているんだろうか?
それともすでに、“彼女達”が朝斗さんのところにー―ー?
考えれば考えるほど、胸が苦しくなる。
(本当に…もうダメなのかな…。…もう、手遅れ?)
朝斗さんのline画面を開いても、何も送れない私は、画面をスクロールして過去の…今までの会話文を読み返す。
朝斗さんは携帯電話を買い換えたばかりだから、lineの会話文はあまり残っていなかった。
『優妃の番号だけ、分かればいいし』
ふと、携帯電話を買い換えたときの、朝斗さんの言葉が頭をよぎる。
(朝斗さん…)
声が…聞きたい…。会いたい…。
(朝斗さん…)
触れたい、触れて欲しい…。
(朝斗さん…)
バカだ…私…――――。ほんとバカ。
今さら気が付いてどうする―――。
こんな風に…別れを告げられてから、どうしようもなく好きになってたなんて。
「優妃っ、ちょっとどうしたの?」
玄関で制靴を履く私に、母が驚いて声をかける。
「学校、行く」
「何言ってるの、熱が…「大丈夫、行ってきます」
母の声を遮って、私はふらつきながら家を出た。
(後悔してる…凄く…―――)
熱に冒されているからか、いつもの自分ではありえないような行動に出た。
今、伝えたい。今、会いたい。
この瞬間もずっとずっと、変わらない気持ちを。
(朝斗さん…私、貴方が好きです…)
もう逃げない。例え、貴方と釣り合わなくても。




