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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十三章【不安定なこの心】
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翌日の昼、私は言われた通り文化祭実行委員の準備室へと向かった。


「遅くなってすみません!うちのクラス四時限目がっ…体育だったの、忘れてました…っ」


「走ってきたんだ?」

息を切らせていた私を見て、朝斗さんがクスリと笑う。

(う…朝斗さん…今日もカッコイイ…)

一瞬で目をそらして、私は恐る恐る入りながら、朝斗さんに訊ねる。


「ここ…部外者が入ってもいいんですか?」

「優妃は特別。」

“特別”という言葉にドキッと心臓が高鳴る。


(汗臭くないかな…?)

私は朝斗さんが座っていた席から、少し離れて座る。制汗剤スプレーはしてきたけど、それでちゃんと汗の臭いは消えているのかどうか自分では分からない。


「優妃、遠すぎるから。…こっちおいで」

隣の席を引きながら、朝斗さんが言う。


「ぁ…はぃ…」

ドキドキしながら、私は朝斗さんの隣にまで近付く。



「本当はもっと一緒にいる時間があればと思うんだけどな」

「―――すみません…」

登下校のことを言われているのかと思って、私は俯く。


「なんで優妃が謝るんだよ」

軽く笑って、朝斗さんが言った。


「優妃、」

お弁当を開いて食べ始めたところで、朝斗さんが言った。

「―――三年生に、呼び出されたんだって?」



「…どこでそれ…」

私は驚いて箸を止め、朝斗さんの方を見る。


「気付かなくてごめん。先輩方には優妃のこと、きちんと説明したし、もう人目気にしなくても大丈夫だから」

朝斗さんが優しく言った。


「…―――っても、優妃が気にするんだったか」


「すみませ…」

(謝ってばっかりだ…私…)



「………」

朝斗さんは黙ったまま、困ったように微笑んだ。


(困らせてる…私はいつだって自分のことばかりで…)


朝斗さんにも心から笑って欲しいのに。

そんな表情させたくないのに。

(向きあうって、決めたばかりなのに…)



「早く一緒に登下校したいんだけどな…」


「そう…ですよね。私も頑張ってみます」

そう呟いた朝斗さんに、私は俯いたまま答えた。


「え…?本当に?」

朝斗さんが驚いて私の方を向く。


(あ、笑ってくれた…)

朝斗さんが私を見て笑ってくれたら、それだけで幸せだった。

(最初から、朝斗さんのことだけ考えてたら良かったんだ…)


「はい。」

私は朝斗さんに微笑んで答えた。


周りにどう見られても、私は…朝斗さんが好き。

朝斗さんに喜んで貰えたら、それだけで幸せ。


(そんなことに、今気が付くなんて…―――)




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