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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十二章【文化祭準備】
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「こんな感じとか、どう?」

「………」


「優妃、」

気が付いたら手芸屋さんにいて、翠ちゃんが私の名前を呼んだ。


「あ…ごめん。聞いてなかった」

「――――これとか、これ。生地にしたらどうかって話」

「あ、うん。良いかも」

翠ちゃんが、手に持っていた生地に視線を落とし頷く。だけど、それは自分の意志ではなくてただ頷いただけだった。


「――――あー、ごめん…。私いま、」

「心ここにあらず、でしょ?見れば分かるわ!」


正直に話そうとした私に、翠ちゃんが、ため息混じりに言った。


「一護のこと?」

「うん…」

私は翠ちゃんに話すことにした。自分のズルさを。


「私、一護くんの気持ち…ね、夏休みに朝斗さんと話してるところ聞いてたから…何となく…知ってたんだ」



『じゃあ朝斗と付き合ってなかったとしても一護とは友達なんだ?』

あのときの…琳護先輩の言葉が、ずっと耳に残ってる。



「だけど、知らないふりして…友達続けようとしてた。」

(だって一護くんは、初めての男友達で特別で…)

――――手放したくない。


「だけど、それは一護くんを傷付けてる…んだよね?」

話してたら、胸がツキンと痛んだ。


「さぁ?それは分からない」

翠ちゃんが、他の生地にも手を伸ばしながら言った。


「アイツが傷付いてるかは知らない。でも、報われないのに…友達続けるのって結構キツいと思う。」


(うん…分かってる…)


「優妃は、一護のこと嫌いじゃないでしょ?」

翠ちゃんが、私の方を向いて目があった。


「そりゃそうだよ。一護くんのこと嫌いになれる人なんていないよ」

私は力強く、そう断言した。

(一護くんは優しくて、ちゃんと欲しい言葉をくれる…)


「でも、そういう好意的な態度が、生殺しになるってこと」

「………」

(生殺し…)


「期待しても無駄なのに。優妃はそんなつもりでなくても期待させちゃうの」

「………」

「まぁ、一護(アイツ)に彼女でも出来ればハナシは変わってくるかもだけど」

「彼女…」

「その為にはまず優妃のことは諦めてもらわないとね。それまでそっとしといてやって」

翠ちゃんは優しく笑った。


「……そっか。そうだね」

(一護くんに、彼女が出来たらー―――また友達になってもらえるのかな…)


「ちょっと…。なんでそこで泣くっ?」

「え…?あ…れ?」




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