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「結局、自分で背負い込むことにしたわけね」
翌朝、ホームルームが終わると翠ちゃんが私の席に来て言った。
先程のホームルームで、文化祭の役割決めをしたから…そのことを言っているのだとすぐに分かった。
クラスの女子達が誰もやりたがらなかった衣装担当を、私は自ら名乗り出たのだった。
もちろん、裁縫は得意ではない。
でもそうしないと、…朝斗さんに衣装について頼みに行かなくてはならなくなるから…それだけは避けたかった。
「…翠ちゃんも巻き込んじゃってごめんね…」
私は申し訳なくて、翠ちゃんに謝る。
私がおずおずと手を挙げた後に、司会進行をしていた学級委員の翠ちゃんが「では、衣装は私と香枝さん二人で担当します」と言ってくれたのだ。
(またお世話になってしまった…)
「何言ってんの。今更でしょ」
言うと思ってたしね、と笑う翠ちゃんは格好いい私のヒーローだと真剣にそう思った。
「早速衣装作りの為に、帰り手芸屋でも寄ってく?」
「うん!」
私が笑顔で頷くと、翠ちゃんがホッとしたように苦笑いを浮かべる。
「どうかした?翠ちゃん」
「いや、優妃…よく笑うようになったなと思ってさ」
嬉しそうに目を細めて、翠ちゃんが言う。
(翠ちゃん…―――?)
「正直、早馬先輩と付き合ってるとか言い出した時は『大丈夫か?』としか思わなかったけど」
「?」
「早馬先輩も変わってきたみたいだし、良かった良かった」
「翠ちゃん、それ何の話?」
話が理解できなくて、私は首をかしげる。
「いーの、いーの。あんたは気にしなくて!私は優妃が幸せならそれでいいんだから」
(翠ちゃん、喜んでくれてる…のかな?)
「えーと…。………ありがと、う?」
これで合ってるのかなぁとおそるおそる言った私に、翠ちゃんが笑った。




