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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十一章【答に向き合う】
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ファミレスで夕ご飯を食べて、店を出た。

店に入る前は胃が痛いくらいの悩みを抱えていたくせに、今はお腹もいっぱいだが、それよりも胸が一杯だ。


「朝斗さん、どこ行くんですか?私、駅こっち…」

駅とは逆方向に歩き出した朝斗さんに、私はあわてて声をかける。

「あぁ、ごめん。あとちょっとだけ付き合って」

そう言って、ふらりと立ち寄ったのは携帯電話のショップだった。


「解約したいんだ、このスマホ」

普段使っていたはずの携帯電話を取り出して、朝斗さんが言った。

「え?なんでですか?」

「要らない番号がありすぎるから」

そう言って朝斗さんは解約の手続きをして、そのまま新規で携帯電話を買い直した。そして新しい番号をすぐに私に教えてくれた。


「優妃の番号だけ、分かればいいし」

心臓がドキンと高く跳ねた。

(なんて殺し文句…)

「―――大袈裟ですよ…」

私はそれを悟られまいと目をそらす。


「確かに。」

ふはっと朝斗さんが笑った。

(微笑むんじゃなくて、ちゃんと…笑った)

水族館で笑った時以来だな、と朝斗さんのレアな笑顔を見つめる。

(朝斗さんのこういう表情(かお)、私に気を許してくれてるみたいで…すごく嬉しい)

ふと気付いたら、自分も笑顔になっていた。




「良かったんですか?」

携帯電話ショップを出て、駅まで並んで歩く。


「うん。本当に、もう必要ない番号ばかりだったし」


(私が彼女達(過去)を気にしてたから…、ですよね?)

「すみません…」

聞こえないくらいの声で私はポツリと謝った。

(ありがとうございます…)


「ん?」

「いえ。―――今日、気になってたことが聞けて良かったです」

誤魔化すように話を変えると、朝斗さんが私を嬉しそうに見つめていた。

「俺も」

いつもの完璧な微笑みではなくて、少しはにかんだ笑顔で朝斗さんが言った。


「優妃が思ってること、聞けて良かった」


(甘い…―ーどうしよう…すごく甘い…っ)

バッチリ目があって、直視してしまった私は慌てて下を向く。

(わーっ!鎮まって心臓!)


「他には?」

顔を赤くして動揺していた私に、朝斗さんが言った。

「困ってることとか、ある?」

(困ってること…―ー――)

朝斗さんの質問に、私が今、頭に思い浮かんだこと…―――言ってもいいですか?…いいんですか?


「…あるんだ?」

朝斗さんが黙りこんでいた私の顔を覗き込む。


(そりゃ、ありますよ…っ!)


「朝斗さんが…優しすぎて、甘過ぎて困ってますっ!」


(私の心臓が、持たないんです…っ!)


私の言葉に一瞬キョトンとした朝斗さんが、その直後に悪戯な微笑を浮かべて言った。


「そっか。でもそれは諦めて?」


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