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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十一章【答に向き合う】
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「どうして優妃が…(アイツ)のことを?」

明らかに怪訝な顔をして、朝斗さんが呟く。

その言葉に、私との間に一線引かれたような気がして苦しくなった。


「すみません聞いてしまったんです…。私、その人が…特別な人だって知らなくて…」

「は?特別?」

「花火大会の時、一緒にいた…美人さんです、よね…?」

変な汗が、手からじわりと出てくる。その手をぎゅっとテーブルの下で握る。

(聞いてしまった…聞いてしまった…私が気になってた紫さんの存在(こと)――――…)


「……――見たんだ?優妃」

コクンと頷くだけで、私は何も言えなかった。

胸の中がジリジリと痛む。

はぁ…、とため息をつかれて、私は次の言葉を聞く心構えをする。


(アイツ)はただの従兄弟だよ。恋愛対象になることもない。」


(え…?)

「――――イトコ…」

あまりに拍子抜けして、私は馬鹿みたいに同じ言葉を呟いてしまう。


「―――でも私のこと知ったら、紫さんが黙ってないって…」

(先輩達が…っ)


「ったく…誰がそんなこと吹き込んだんだか…」

面倒臭そうに、朝斗さんがぼやく。


「まぁアイツは黙ってないかもな…俺を弄るのが生き甲斐みたいな奴だから」

「え?」


「俺を弟みたいに思ってるのか知らないけど。(アイツ)は昔からそういうやつなんだよ」

「――――好きとか、本命とか…じゃないんですか?」

「勘弁してよ。」

半べそをかいていた私に、朝斗さんが苦笑する。


(なんだ…―ー。違うんだ…)

ホッとしたら、身体中の力が抜けて、ソファーチェアーからズリズリと落ちそうになる。


「っていうか、優妃…それずっと気にしてた?」


朝斗さんが、私に嬉しそうに微笑んで訊ねる。


「………はい…。」

(なぜそんなに嬉しそうなんですか?私は本当に緊張して、大変だったのにっ!)

不服そうにそう返事をした私を見ながら、朝斗さんが呟いた。


「聞かれるのも、悪くないな」

「え?」

口元を頬杖をついた手が隠していたからか、私にはよく聞こえなかった。


「なんでもない」

朝斗さんはただ…誤魔化すようにそう言って、私のことを嬉しそうに見つめていた。


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