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言ってしまった!!私…こんなタイミングで、こんな拗ねたような発言を!!
「優妃?」
「わた…私…今まで朝斗さんが付き合ってた先輩達みたいに綺麗でもないですし、……色気もないし…、というか、割り切った関係にもなれそうにありません…」
(あぁ…重荷にはなりたくないって思ってたのに…なんでこんな重たい言葉が次々と…―――っ)
「………」
「それでも傍にいたいって思うのは、ダメですか?」
(何を言ってるんだろう…私―――)
「優妃は俺の“彼女”だろ?」
朝斗さんの声が…少し低く感じた。
(朝斗さん…?―――もしかして、怒らせた…?)
「言ったよな?君が初めての“彼女”なんだって」
「で…も、今までの彼女達とはそういう関係を…付き合ってなくてもしていたんですよね…?」
「あいつら…敢えてバラしたってことか」
伏せ目がちに何かボソッと呟いて、朝斗さんが私の方を見る。
「確かに今までは何も感じなかった。付き合うとか付き合いたいとか、思ったこともない。」
「………」
「雰囲気に流されて、抱くことも出来たよ。どうでも良かったから。」
(自分で聞いたくせに…耳を塞ぎたい…)
朝斗さんの過去なんて、聞かなきゃ良かった。そう、彼女達はもう朝斗さんの“過去”になってるって分かってたはずなのに―――。
ギュッと胸が痛む。
「でも優妃は違う。大切な彼女だから、優妃が嫌ならずっと触れないよ」
「え…」
(触れない…?―――違う、私が欲しかったのは、そんな言葉じゃなくて…)
「優妃が嫌がることは何もしないって誓う。だから、」
「………」
(私が嫌なのは…彼女達の存在で。特別な…紫さんの存在で…。)
聞いたら面倒臭い女だと思われる?重い女だと思われる?
だけどこれをずっと胸の中に押し込めていたら…、私はいつまでも朝斗さんと向き合えない…。
「だから優妃には隣で、…笑顔でいて欲しい。笑顔にしたいんだ…―――」
この時、朝斗さんの言葉が耳に入ってこないぐらい、私は緊張していた。聞かなきゃ聞かなきゃと、そればかり考えていた。
「…誰、ですか?」
声が…震えた。
「え?」
「“紫さん”て、朝斗さんの何ですか?」




