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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十章【嫉妬の渦】
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『…なにも知らないで朝斗と付き合ってんの?』


『朝斗にとって、紫さんは特別。曜日代わりの私達と違ってね』


『きっと紫さんはまだ貴女の存在すら知らないはず。でも…貴女と付き合ってるなんて知ったら、紫さんが黙ってないよ。』


(“紫さん”…)

花火大会で見かけたあの綺麗な大人の女性(ひと)

私なんかと比べ物にならないくらい、素敵なひと。


「―――ひ?優妃?」


(朝斗さん、本当はその人のことが好きなんじゃ…)


「ちょっと、優妃!」

肩を掴まれて、私は初めて自分が呼び止められていたことに気がついた。


「顔…真っ青。大丈夫…?」

心配して三年の校舎まで来てくれたのか、そこには翠ちゃんの姿があった。


「…大丈夫」

震える唇で、私は一言そう言うのが精一杯だった。


「だから…―――、」

翠ちゃんが私を抱き締めて、そっと背中をさすってくれる。

「危険だって言ったでしょ…」


「うっ…く」

ついホロリと胸に染みて、嗚咽が漏れる。


「なに言われたの?」

「………っ」

(言えない…。言いたくない…。)

言われたことが…知らないことばかりで。ショックなことばかりで。口になんて、出せるわけがなかった。


「優妃?」

「翠ちゃ…私、間違ってた?」


―――ずっと触れないように避けていたあの日の記憶。

『優妃を喰べたいんだけど?』

(あの言葉は、やっぱり…そういう事で…)


それに応えないといけない。応えないと、朝斗さんがあの先輩達のところに戻ってしまうかもしれない。そう思うのに…―――なのに私は…。


「優妃…?」

「私と先輩じゃあ釣り合わないって…分かってたけど。…分かってて付き合うって、決めたはずだったんだけど…」


どうしてすんなりエッチ出来なかったんだろう。どうしてしたくないって思ってしまうんだろう。―――朝斗さんが好きなのに。


「なんかもう、消えたくなる…」

自己嫌悪で消えてしまいたくなる―――。

自分の可愛く無さに。自分の魅力の無さに。 周りの評価に傷つく自分に。

―――そうまでしても、朝斗さんと別れたくない自分に。


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