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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十章【嫉妬の渦】
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「で、そんなとこで何してたんだ、琳護?」

朝斗さんがいつになく冷ややかな目を琳護先輩に向ける。


『俺の彼女だよ』

頭の中で、その台詞だけがリピートされている。

(あぁ―…やばい…―――キュン死にしそう)


「いや、俺は今、華子と来たところだったよ。優妃ちゃん見かけてちょうど声かけたところで」

な、優妃ちゃん?とこちらに視線を送ってくる琳護先輩に、ボケッとしていた私は慌てて話を合わせるために頷く。


「ふうん?」

腑に落ちない顔で朝斗さんが言う。

「ま、…どうでもいい。―――優妃、帰ろう?」

突然そう言われて、私は面喰らってしまう。


「――でも、朝斗さん…一護くんと…」

チラリと一護くんの方に視線を向けると、朝斗さんが私の手をとって歩き出した。

(ててててて、手!!!)


「あ、デートか?楽しんでー」

ヒラヒラと手を振る琳護先輩の隣で、黙って立ったままの一護くんがこちらをじっと見つめていた。


「ちょっと待って!!」

その場から居なくなろうとしかけた時、そんな声で私と朝斗さんの足は止められた。


「―――華子、ちょっと落ち着こうかぁ」

「落ち着いていられないわよっ?って、落ち着いてるわよ私は!」

よほど混乱しているのか、華子先輩はおかしな日本語を話していた。


「朝斗に彼女?どういうこと?朝斗は皆の朝斗であって、彼女なんて存在は許されない筈。でしょ?」

華子先輩が、私に詰め寄る。栗色の髪が風に靡くと、甘い素敵な薫りがした。


「一体貴女はどんな手を使って朝斗に取り入ったの?」

「私は…」

「あのさ、」

私を庇うように、朝斗さんが少し前に立った。


「何か勘違いしてないか?俺が、優妃に一目惚れして付き合うことになったんだよ」

いつもの王子様スマイルで、朝斗さんが華子先輩に説明してくれる。

「だから、取り入ったのは俺、なんだけど?」

「な…っ、そんな…」


「野々宮さん、優妃(彼女)すごく大切だから仲良くしてやって?―――頼むよ」

「そ、それは勿論…」

かなり動揺している華子先輩は、完璧な王子様スマイルにやられて顔を赤くしている。


「そう。それは良かった。―――優妃行こっか」

「へ?」

実は私も朝斗さんの王子様スマイルにやられていたので、突然声をかけられて思わず間抜けな声が出てしまった。


「―――あの…っ、朝斗さん、…」

グイグイ手を引いて、朝斗さんが歩き出す。


「さっきの聞いてたの?…なら分かったよね?一護(あいつ)の気持ち…」

こちらを見ることなく、朝斗さんが言った。


(一護くんの気持ち…って、それは…)

「…え、あ…えっと…でも…」


「俺は、一護(あいつ)と優妃が話すの、見たくない」

「………」

私はどう答えたら良いのか、分からなくて黙っていた。

(朝斗さんのことは好き。でもそれだけじゃダメなんだ。―――一護くんと話すことも、朝斗さんは嫌がるのなら…。でも私は一護くんと話せなくなるのはつらい…。)


朝斗さんが足を止める。私の方を振り返り、真剣な目を向けてくる。


「それでも優妃は、一護と友達でいたい?」


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