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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十章【嫉妬の渦】
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(私にとって一護くんは友達で。初めて出来た男友達ってやつで。だから朝斗さんがそんな嫉妬する必要なんてないのに…――――)


そう、思っていたのに。


『優妃はお前のこと“友達”として信頼してるだけだからな』

『言われなくたって分かってんだよ』


(――――…さっきのあれは…?)




琳護先輩が私をじっと見ていることに気が付いて、私はハッと我に返る。

「優妃ちゃん、一護のこと嫌いになった?」

大人びた表情でニコリと微笑んで、琳護先輩が訊ねる。


「まさかっ!そんなわけないです!一護くんはすごく大切な友達ですから」

「ま、そうだよな。朝斗とつきあってるんだから」


頭の後ろで手を組むようにして、琳護先輩が言うと少しずつ朝斗さんと一護くんから遠ざかるように歩き出す。


「え?誰と付き合ってるかなんて関係ないですよね?」

私は琳護先輩の言い方に、違和感を感じて聞き返す。

「じゃあ朝斗と付き合ってなかったとしても一護とは友達なんだ?」

意外そうな顔をして、私の方を振り返った琳護先輩と目が合う。

「それは…どういう?」

「前から聞いてみたかったんだけどさ、君は朝斗のことなんで好きなの?」

(なんでって…)

琳護先輩は、一護くんとは少し性格が違う。一護くんは口調は少し荒いけど真面目。だけど、琳護先輩は一護くんと同じように明るいけど口調は軽め。だけど軽いふりしてるだけのようにも見える。


「イケメンだから?」

―――…軽い口調なのに、グサグサと刺さる感じ。


「…ひ、一目惚れです。クラスの女子達が騒いでた時に偶然朝斗さんを見て…素敵な人だなって」

「そっかぁ。優妃ちゃんも案外チョロイんだね。やっぱ男は見た目かぁ」

(チョロイ…そう思われてるのかな…朝斗さんにも…)

「…なんかすみません」

私はつい、謝ってしまう。


「まぁ、朝斗(あっち)が君にゾッコンだからね。いんじゃない?二人が幸せなら、それで」

「琳護先輩…」

琳護先輩にニカッと笑われると、なんだか少しだけ救われる。


朝斗(あいつ)、変なとこプライド高いけど、まぁこれからも宜しくね」

「はい」

朝斗さんと仲の良い琳護先輩から『宜しく』と言われたら、なんだか認められた気がして私はくすぐったい幸せに酔いそうになる。



「あっ、見つけた!琳護!」

「げ、華子…」

栗色の緩やかな髪が印象的な、瞳の大きく可愛らしい女の子が、突然後ろからひょこっと現れた。


「仕事サボって何してんの?…―――ってアレは…一護くんと朝斗?」

すでにかなり離れたところまで来ていたのに、彼女は朝斗さんと一護くんが目についたらしい。私はその視力に驚いた。

「何あれ!滅茶苦茶楽しそう!」


瞳を輝かせた彼女は、二人に夢中なのかドンッと押すような勢いで隣にいた私にぶつかる。

「あ、ご免なさい…。って、あなた誰?」

文字通りぶっ飛んだ私は、間抜けなコケっぷりで尻餅をついたまま彼女を見上げる。


「あ…私はー―――」

香枝優妃(かえだゆうひ)。」

私ではないところから、私の名前が聞こえてくる。と、同時にその人が私へと手を伸ばしてくれた。


「俺の、彼女だよ。」

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