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恋してるだけ   作者: 夢呂
第九章【恋という気持ち】
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朝斗さんのアパートの前に着いた私は、深呼吸して落ち着いてから、勇気を出してインターホンを押す。

でも、朝斗さんは出てくれなかった。

(朝斗さん…朝斗さん…)


…何度かインターホンを鳴らす。それでも朝斗さんは出てくれなかった。


「朝斗さん…」

(出てくれないの…?どうして…?)


「優妃?」

その場にしゃがみ込んだ時、なぜか後ろから朝斗さんの声がした。私は突然で心臓が激しく鳴るのを感じていた。

(出掛けてたの…?)


「まだ帰ってなかったのか?」

優しく心地好く響く声。私を甘やかしてくれる、その声が好き。


「さっきはごめんなさい…。私、自分のことでイッパイイッパイになってしまって。それで…」

振り返って後ろにいた朝斗さんに頭を下げる。

(許してもらえないかもしれない。こんな私なんて…もう…。)


「俺も。さっきはあんな言い方して一人で帰らせたりしてごめん。―――入る?」

思いがけない言葉が降ってきて、私は顔を上げる。朝斗さんは怒ってなかった。いつもみたいに優しく微笑んで私を見つめていた…。


「…はい」

思わず身構えてぎゅっとスカートの裾を握った私に、朝斗さんは苦笑する。


「大丈夫。絶対、何もしないから」


朝斗さんは私を安心させようとそう断言したのだろう。それなのに私は少しショックだった。

(やっぱり私じゃ役不足だから…?)

さっきは朝斗さんの要求に応えることも出来ずあんな風に泣いてしまったくせに、今ショックを受けている――そんな自分の身勝手さに嫌気がした。



「で?どうしたの、ここに戻ってきて」


コーヒーを淹れながら、朝斗さんが言った。私はリビングのソファーに座ってそんな彼をドキドキしながら見つめる。


「私、朝斗さんと話がしたくて」

「話?」

「以前に…朝斗さんは私に、“知ることは必要はない”と言いました」

私の言葉を、朝斗さんは真剣に聞いてくれている。そしてさりげなく目の前に「どうぞ」とコーヒーを置いてくれた。


「うん。言ったね。それで?」

「でも…私は、知りたいんです。朝斗さんのこと」

私がそう言うと、朝斗さんは黙ってコーヒーカップを口に運ぶ。


「私…もっと朝斗さんのこと分かりたいんです」


(気になってても聞けなかったこと、色々知りたい。知って、分かり合いたいと思うのは…間違ってる?)


じっと朝斗さんの方を見ていると、コーヒーカップをテーブルに置いて、朝斗さんが観念したように口を開いた。


「…いいよ、話す。優妃は何が知りたい?」

「私…」


聞きたいことはたくさんあった。でも、一番最初に浮かんだ疑問(こと)は、そもそものところ。


「本当に朝斗さんの彼女なんですか?」


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