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先輩に帰ってくれと言われたとだけ、私は一護くんに伝えた。
『朝斗が?優妃に?』
何でだよ、あり得ないだろ…と呟きながら一護くんが聞き返す。
「…私が…先輩の期待に応えられなくて…」
『は?期待?何の?』
そこまで言っても一護くんには通じなくて、私は赤面しながらもゴニョゴニョと説明をする。
「いや、だから…その…し…たいって言われたんだけど私、泣いてしまって…」
『あ、朝斗のやつ…っ!マジで最低だな!今度会ったらぶん殴ってやる!!』
一護くんが激昂する。だけど私はその瞬間にハッと気が付いた。
(違う…―――先輩はなにも悪くない。)
その後だって「どうかしてた、ごめん」って、謝ってくれた…。
それを “怒ってる”と感じたのは、最後の「帰ってくれ」の一言がショックだったから。
「ごめん違うの、」
さっきまではショックで、マイナスのことばかりが浮かんでいたのに、一護くんに話したら冷静になることが出来た。そして曇っていて見えなかった自分の気持ちに光が射すように、見えてきた。
『優妃?』
説明を求めるような、一護くんの声。
「――――ごめん、私が間違ってた!」
(―――私、自分のことばっかり考えた。先輩が分からないんじゃない。私が先輩をちゃんと知ろうとしてなかったんだ!)
そう気付いたら、気持ちがまっすぐに向いていた。
ドキドキという甘い鼓動も、朝斗さんのことを想って動き出す。
『もしもし?優妃?』
「一護くんに電話して良かった!本当にありがとう!私、行かなくちゃ…」
早口にそう言いながら部屋を出ると、足は勝手に行くべきところへ向かい出す。
『え、おい待てって!どこに――…』
「朝斗さんのところ!ありがとう一護くん」
一護くんにお礼を告げて通話を終了させると、サンダルを履いて家を飛び出した。
(朝斗さん、私知りたいんです。朝斗さんのことを。
―――――…好きだから。)




