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恋してるだけ   作者: 夢呂
第九章【恋という気持ち】
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一琉の部屋から、逃げるように家に戻った私はすぐに自分の部屋へと駆け込んだ。



『優妃?どした?』


携帯電話から聞こえてくる、一護くんの声。自分からかけたくせに、彼の声を聞いたら私は何も言えなくなってしまった。


「………」

(どこから話せばいい?話しても、いい?)

ドアにもたれ掛かるようにして、一護くんの声を聞く。

『おい。もしかして…上手くいかなかったのか?誕生日』

「………」

『もしもし?優妃、返事くらいしろって』

(一護くん…困らない?しつこい…?)


「…ごめん。」

私は掠れた声でそれだけ呟くと、一方的に通話ボタンを切った。


一琉の存在から逃れたくて、一護くんに助けを求めるなんて、私はどうかしてる。私の男友達は、一護くんしかいない。―――だからって頼りすぎたらダメだ。絶対迷惑だ。


手元の携帯電話の着信が鳴り出してビクッとする。―――すぐにかけ直して来てくれた一護くんからの電話を、震える指で通話ボタンを押して出た。


『おい、いきなり切るなよ!』

怒っているような台詞なのに、一護くんの声は優しい。

「ごめん…」

『優妃、俺嬉しいからっ』

ぶっきらぼうな言い方で一護くんが言った。


「え?」

(…嬉しい?)


『電話くれただけで、嬉しい。だから何か言いたいことあったんなら、俺何でも聞くし、…てか聞きたいから』

「一護くん…」

照れたような口ぶりで一護くんが言った。私の胸が熱くなる。

(どうして…?)


『だから話せって、優妃の話』

(どうして一護くんは…―――)

唖然として、私は暫く何も言えないでいた。


(―――ここまで言ってくれる人、他にいる?私なんかの話を聞いてくれる人…。聞きたいなんて、言ってくれる人。)


一護くんは優しい。こうやって…優しい言葉でいつも私を助けてくれる…。


(一護くん…)

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