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恋してるだけ   作者: 夢呂
第七章【初めてのデート】
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「今日はありがとう」

家の前まで送ってくれた先輩が、私に微笑んで言った。


「いえ、こちらこそありがとうございました」

(ありがとうと言われることを、私は何もしていないし…。)

恐縮しながら私はペコリと頭を下げる。



「じゃ、また連絡する」

すぐに私に背を向けて、先輩が帰っていく。


「あ…あのっ」

先輩が帰っていくのを見ていると、私はつい引き留めたくなってしまう。…何でだろう。


「ん?」

先輩が、ゆっくりと振り返る。


「あの私…先輩。じゃなくって朝斗さんのこと何も知らないなって、それで…」

(もっと一緒にいたい。知りたい。)


私は気持ちを上手く伝えられずにいると、先輩が言った。

「…いいんじゃないかな?別に知らなくても」


「え…」

思いがけない言葉に、私は顔を上げると困ったような笑顔の先輩と視線がぶつかった。


「知りたいと思ってはいけませんか?」


「いけなくはないけど、必要ないと思うな」


(やんわり断られてる…?どうして?なんで?)



暫くして、先輩が口を開いた。

「…優妃は、何が知りたいの?」

そう言う先輩の表情(かお)からは、笑みが消えていた。


「…――――た、」


(言ってもいいのかな?聞いたら迷惑なのかな?)

弱々しい声で、私は言った。


「んじょうび…を、知りたいです」


「誕生日?俺の?」

少し困ったように、先輩が頭をかく。


(それすら、知られたくないんだ…―ー)

ショックで俯く私に、先輩の声が頭上からそっと降ってきた。


「――――8月2日。」


(8月…2日…?)


「え…き、昨日…?」

驚いて顔を上げると、先輩の頬が少し赤くなっているように見えた。


「そうだよ昨日」

先輩がそう言って、苦笑する。


(だから、昨日…―ー)

一度誘われたのに、私はなんで勉強会を優先してしまったのだろう。今さら後悔しても仕方ないのは分かってるけど、それでもやっぱり後悔した。


「ごめんなさいすみません私…知らなくて…昨日…」


「別に良いよ、先約だったんだし」

頭を下げた私の頭をポンと優しく撫でる先輩の手。


「知ってたら断ってました、私…」


「落ち込みすぎ」

クスクス笑って、先輩がからかうように言う。


「せっかく今日楽しかったんだから、そんな顔しないで」


そんな風に言ってくれる先輩は、やっぱり大人で格好いいなと思った。

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