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恋してるだけ   作者: 夢呂
第七章【初めてのデート】
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水族館に着くと、チケット売場で少しだけ並んだ。


「うわ、見て…あの人超格好いい!」

「マジ、あんな彼氏欲しい!!」


少し後ろから女の子達のそんな声が聞こえてきた。

振り返らなくても、それは私の隣にいる先輩のことだと分かった。


(やっぱりどこに行っても、イケメンは注目されてしまうんだなぁ。)


優越感がないと言ったら嘘になるけど、でも釣り合わない自分への嫌悪感の方が勝っていて、少しだけ先輩から離れた。


「優妃?どうした?」


「あ…いえ。」

まさか少し離れただけでそんな気遣われると思わなかった私は、俯いたままぎこちなく答える。


「待つの辛かった?あと少しだけど」


「あ、全く辛くないです!」

先輩に気を遣わせてしまい、焦って答える。つい、先輩の顔を見上げてしまい目があってしまった。

隣にいる、女の子皆が憧れている早馬先輩と。


(―――辛いのは、私が先輩に相応しいような美少女でもないから…)

スカートの裾をギュッと掴んで、私はまた俯く。


(もっと、可愛いかったら良かったのに…)



「…無理はすんなよ」

ポンと頭の上に先輩の手が降りてきた。その言葉も、“釣り合ってないのに”と言われている気がして勝手に落ち込む。





暫くしてチケット売場の順番がやって来て、私がお金を払う準備をしようとお財布をバッグから出そうとすると、


「いいよ、俺が払うから」

と、手で私の財布を出そうとしていた手を然り気無く制する。



「え、でも…」


「ほら、もう買ったから。行くよ」

私が戸惑っている間にすでに買ってくれた先輩が、チケットを二枚ヒラヒラと見せながら先を歩いていく。


「え…先輩」

私は先輩を追いかける。先輩は止まらずにスタスタと歩いていく。

(あ…)

「じゃなくて、朝斗さん…」

また呼び方を間違えたことに気がついて、すぐに呼び直す。



「こういうときは笑顔でありがとうって言うもんだよ、優妃?」

振り返った先輩がチケットを一枚私へと差し出しながら微笑む。


(か、かっこ良すぎです…)

だけど見惚れてる場合じゃない!私は先輩に言わなくちゃいけない。今!


「いえ、それは私困ります!可愛げなくてごめんなさい!でも、自分の分のお金は払わせてください」


「は?」


一瞬呆気に取られた顔をした朝斗さんが、次の瞬間にはあり得ないぐらい、お腹を抱えて笑っている。


いま、一体どこにそんな爆笑ポイントがあったのだろう。


でも、朝斗さんがこんな風に笑うのは初めて見た。なんだかいつもの隙のない微笑みよりも、何倍も親近感が湧く。

それがなんだか嬉しくて自然と私も頬が緩む。


「あの…朝斗さん?」


私が遠慮がちに声をかけると、笑いすぎて涙が出てきたのか目元を拭いながら朝斗さんが言った。


「―――あ、じゃあ受け取るよ。優妃がそこまで言うなら」


ククッとまだ少し笑っていたけれど、朝斗さんが手を出してくれたので私はホッとしながら自分のチケット代を支払う。


「ありがとうございます。でも、気持ちは嬉しかったです…本当ですよ?」


こんな所で変な意地を張ってしまった私を嫌いにならないで欲しくて、必死になってそう付け加える。


「うん。分かってる」

朝斗さんは笑顔で頷いた。

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