252
私の言葉で朝斗さんの顔から一瞬で笑みが消えた。
(わわ…私の馬鹿!!!!)
さぁぁぁっと一気に血の気が引く。
いくら緊張して頭が真っ白になってたからって!
タイミングとか、空気を読むとか全くせずに私はなんてことを!
(…絶対言うタイミング、今じゃなかったよね?!)
朝斗さんが沈黙している間、後悔しながらダラダラと冷や汗をかき、私はただうつ向いていた。
「…―――どうして?」
暫くして、そんな静かな声が頭上に降ってきた。トーンは静かなのに、怒っているのが分かってヒヤリとする。
「あ…の。朝斗さんが文化祭の実行委員長してた姿、凄く素敵でした。」
私は渇いた唇で、うつ向いたままそう答えた。
「それで?」
威圧感のある朝斗さんの声に、胃がキリリと痛む。
「―――それで…、きっと皆も朝斗さんに生徒会を任せたいと思ってるんじゃないかなって」
自分の声が、どんどん小さくなっていく。
「言ったろ?俺は興味ないって」
「朝斗さん…」
朝斗さんの不機嫌な声に、おそるおそる顔を上げると朝斗さんの手が、私の頬に触れた。
その手は…ひどく冷たく感じた。
「そんなもの、優妃との時間が減るだけだ」
何よりも大切に想ってくれてる朝斗さんの気持ち。
私への想いが痛いほど伝わってくる。
(私を優先してくれるのは嬉しい…)
だけど。
「…ダメなんです」
生徒会なんて、やって欲しくない。
ずっとこのまま傍にいたい。
私もそう思ってた。
だけど。
(それは…私の弱さがみせるワガママだから。)
「―――自分の時間を大切にして欲しいんです」
こんなことでダメになるような自分だったら…この先、朝斗さんの傍にいられなくなる気がする。
高梨先生の予言通り、ダメになってしまう気がする。
(だから…――――)
「優妃は、離れても平気なんだ?」
「平気に、なりたいです」
そんな事で不安になったりしないように。
私は朝斗さんを信じてるから。
朝斗さんが好きだから。
「もう暗いし、家まで送る」
朝斗さんが私の家へと向かおうと先を歩き出す。
「朝斗さん…っ」
「少し…考えさせて欲しい」
そう言われたら、何も。
何も言えなくなってしまった。




