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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十九章】のぞむ
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放課後、待ち合わせの駅に着くと鼓動が激しくなるのに加えて胃が痛くなってきていた。


(…どうしよう…これ。思ったより重症かも…)


「優妃っ?」


胃の辺りを押さえて歩いていると、少し遠くから朝斗さんの声が聞こえてきた。

気のせいかなと思いながらも振り返ると、朝斗さんがこちらに向かって歩いてくるところだった。


(ど、どうしよう…心の準備が…っ!!)


顔が赤くなるのを感じて、ますます恥ずかしくなりうつ向く。同時に通りがかりの女の子達が、朝斗さんが向ける笑顔の先にいる私の姿を確認するように見つめてくる。

あの子が彼女?あり得ない!と顔に出てる子もいれば、声にも出てる子もいた。


(この感じも、…―――久しぶり)



目の前で足を止めた朝斗さんに、恥ずかしくて顔が上げられない。


「優妃?」

「お、おかえりなさい…」

足元に視線を落としたままそう言うのがやっとだった。


「ん。」

その瞬間、ふわっと体が包まれて、朝斗さんが私を抱き締めると耳元で言った。

「ただいま」


(し、心臓が爆発しちゃう…っ!!)

その破壊力に、身体が硬直して頭の中が真っ白になった。


「あ、朝斗さん…。あの、こここ、ここ、駅ですから」

ひ、人目が…あのぉ…気になりますし。

久しぶりなので、いきなりこういうのはちょっと…心臓に悪いといいますか…。



「優妃に逢いたかった…」

私を抱き締めたまま、朝斗さんが言った。


その一言で、この腕の中から逃れる為の言い訳は何一つ浮かばなくなった。


(―――私も。)


逢いたかった。

こうして、朝斗さんの体温(ぬくもり)を感じたかった。

ぎこちなくおずおずと朝斗さんの背中に腕を回すと、生徒会長の声が頭の中に聞こえてきた。


『あいつの世界には、君しか居ないみたいだ』



(そうだ…私、言わなきゃー―――…)



「朝斗さん、」

私が顔を上げると、腕を緩めて朝斗さんが私の顔を覗き込む。


「ん?」

朝斗さんが私の頬に触れながら、愛おしそうに見つめる。

そんな甘い空気を切り裂くように、私は…言った。



「生徒会、入ってくれませんか?」

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