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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十八章】それぞれの時間
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【朝斗視点】248

「あーさーと」


三日目の大阪観光も一段落し、グループのメンバーとホテルに戻ったところで後ろから無駄に高いテンションの琳護の声がした。


「…なんだよ」

俺は振り向き様に鋭い一瞥を与える。


「随分荒れてんなぁ。彼女(優妃ちゃん)に会えないってだけで、そこまで不機嫌になるか?」


あと一日だろ?と言って琳護は笑った。


その“あと一日”がどれだけ長いのか、こいつは絶対理解していない。



「それより見ろよ、コレ(● ●)。よく撮れてるだろ?」

得意気な顔をして、琳護がスマホの画面を俺の目の前に突き出した。

そこには今朝大阪駅で、地元の女子高生数人に話しかけられた時の俺の姿が写っていた。

どこから来たの?などと話し掛けられ迷惑していたが、全く面識の無い他人だからこそ露骨に嫌な態度を出すことも出来ず、無難に答えていたまさにその場面だ。


「なんだよそれ、消せよ」

「“コレ”。…優妃ちゃんに見せたら、彼女どんな顔するかな?」


楽しんでいるのかと睨み付けるが、珍しく琳護は笑っていない。


「朝斗が素直に“一緒に生徒会やる”って言ってくれれば消すけど?」

「なんだそれ、脅してるつもりか?」

俺が静かに睨み付けると、琳護が溜め息をついた。


「…お前さ、進学クラスだったくせに何で急に就職クラスに変更しようとしてんだ?」


「なんでそれ…」

「―――担任から聞いた。というか、説得しろって言われてんだよ」


それでそんな脅すような真似をしてまで生徒会に?

生徒会の人間は、私立大の推薦枠を優先的に貰えるからか…。


(邪魔するなよ…)


「俺は早く社会に出たいんだ」


俺は早く一人前の男として、認められたい。

そしてすぐにでも、優妃の両親に挨拶したい。

早く優妃と暮らしたい。


「恋は盲目って言うけどここまでとはな…」

琳護が呆れた顔で俺を見る。

「お前がそこまで入れ込むとは思わなかった。」


「んだよ、お前に関係ねーだろ」

俺がそう突き放し、部屋に戻ろうと踵を返すと後ろから琳護が言った。

「言っとっけど、それ、優妃ちゃんのためにはならないぞ」


(は?)

振り返らなかったが、琳護の言葉は俺の心にまで…届いた。


「あの子がそれを喜んでくれると、お前本気で思ってんのか?」


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