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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十八章】それぞれの時間
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土日が過ぎて、月曜日。

朝、駅に着いても待ち合わせ場所に、朝斗さんの姿はない。


そんなことは分かりきっていた筈なのに。

いざその場に着いた途端、寂しさに襲われた。


昨日も電話で話したし、lineのやり取りは頻繁にしているのに、日に日に寂しさは増すばかりだった。


(明日には…帰ってくるんだから―――)


そう思うことで、寂しさを紛らわしている自分はやっぱり弱い気がする。


(このままじゃ、ダメなのに…)




学校に着き、靴を履き替えようと靴箱を開けるといつもはそこにあるはずの上靴が無くなっていた。


(あれ?)


「優妃、おはよ」

「あ、おはよう美樹ちゃん」

外靴を持ったまま答えると、不思議そうな顔をして美樹ちゃんが言った。


「どしたの?」

「あ…。えと、上靴が無くなってて」

「は?マジで?」

小さな声でそう答えると美樹ちゃんが驚きながら私の靴箱を覗き込む。


「ウソー、なんでー?嫌がらせ?」

「…かな?」

小さく笑ってそう答えると、ガシッと美樹ちゃんの両手が私の両肩に置かれた。


「犯人捜し、手伝うよ!」


(犯人捜し…?)


「ありがとう美樹ちゃん。でも、大丈夫だよ。」


誰がやったのかなんて、分からない。

だけど、なぜやられたのかは、分かってるから。


「こんなことで、へこたれないから」



美樹ちゃんとそのまま職員室へ行き、スリッパを借りて教室に戻る途中、登校してきた翠ちゃんと会った。


「おはよ」

「おはよう、翠ちゃん」


「…って、なんでスリッパ?」

翠ちゃんがすぐに私の足元に気が付いたように視線を向けたまま言った。


「朝来たら上靴が無くなってたんだって」

隣にいた美樹ちゃんが廊下を歩きながら私の代わりに説明してくれた。


「あー。早馬先輩のファンか…。よくもまぁ飽きずに…」

「マジね!こんなことしても、なんもメリットないよね?」

翠ちゃんが呆れ顔でそう言うと、美樹ちゃんが興奮ぎみに言った。


「文句あるなら直接言いに来いっての!」

「美樹が熱くなってどーすんのよ」


美樹ちゃんの言葉に、翠ちゃんが笑う。

そんな二人のやり取りで、私は少しだけ気が楽になった。


「二人とも、ありがとう。私は大丈夫だから」

私は二人に笑顔を向けると、二人は複雑な表情で応えた。



(それにしても、嫌がらせなんて久々だなぁ)


冬休み明け、一緒に登校して話題になった時は何かされるかもと覚悟していたけど嫌がらせされることは無かった。


(きっと、傍にいつも朝斗さんがいてくれたから…だ)


朝斗さんに護られていたんだと思ったら胸が熱くなった。


(大丈夫。朝斗さんが居なくても、私は負けない…)


そうならないと。

強くならないと。


(それで朝斗さんの傍に居られるなら…頑張れる。)



「優妃ちゃん、今日帰りにカラオケでも行く?」


教室に着いた時、席に鞄を置きながら美樹ちゃんが明るく誘ってくれた。

気を遣わせてしまっているのが分かって、申し訳ないと思いながらも、そんな美樹ちゃんの気持ちが嬉しかった。


「うん!…あ、でも翠ちゃんカラオケは苦手だって」

「付き合うよ、優妃に」

翠ちゃんの顔を窺うようにしてちらっと見ると、翠ちゃんが当然のような表情で言った。


「翠ちゃん…」

「持つべきものは友達だよね」

感激してる私の隣で美樹ちゃんがニヤッと笑って言った。


(本当に…皆と友達になれて…良かった)


―――しみじみとそう思っていたときだった。




「あ!優妃ちゃん、生徒会長が呼んでるよ」


後から教室に入ってきた明日香ちゃんが、廊下を指差して言った。


「え?」

意味が分からなくて、明日香ちゃんが指す廊下を見ると確かに廊下からこちらを覗き込んでいるのは、壇上などで見たことのある顔の人だった。


(生徒会長が…、私に?)


半信半疑で廊下に出ると、現生徒会長の青木勇夫(あおきいさお)さんが私を見下ろして言った。


「君が、香枝優妃さんか。」

「はい。そうですけど…?」


「ちょっといいか?」


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