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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十七章】バレンタインデー
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その日の夕方、自分の部屋で宿題をしていると朝斗さんから電話が掛かってきた。


「―――朝斗さん、時間大丈夫なんですか?」

他愛ない話をしながら、ふと長電話してても平気なのかと心配になって訊ねる。


『ああ。今ホテルで、あとは消灯時間まで自由だから』

「そっか…」

安堵しながらも、いつもより遠く感じる朝斗さんの声に胸がきゅっと苦しくなる。


(逢いたいな…)


そう思ってしまう自分の弱さに、なんだか不安になる。



『優妃は今日何してた?』

朝斗さんにそう聞かれて、私は不安を蹴散らすように明るく答えた。

「今日は翠ちゃんとガトーショコラ作りました!」


『ああ、逢沢(友達)の家行くって言ってたよな。…上手にできた?』


「はい!出来まし…」

作ったガトーショコラを思い出していたら、なぜか先程の、ガトーショコラを食べた一琉の顔まで浮かんできてしまった。


(一琉、珍しく褒めてくれたよね…)



『優妃?』

朝斗さんの声にハッと我に返る。


「あ…いえ、何でもないです」

私がそう答えるのと同時に、電話越しに朝斗さんを呼ぶ声が聴こえてきた。


『あー…、ごめん。風呂行く時間は決まってて』

「あ、はい。…行ってらっしゃい」


――…電話を切らないといけないのに。

すぐに切れない。

いつもより、電話を切る瞬間が切なくなる。



『また連絡する』


朝斗さんの声。

今日はこれが最後?


「…はい。」


名残惜しくて、“おやすみなさい”も“また明日”も言えなかった。

(もしかしたら、また後で電話出来るかもしれないし…―――)


そう思うことで何とか通話終了のボタンを押すと、堪らなく淋しくなって私はベッドに突っ伏した。



先生に言われた言葉が、ずっと胸に突っ掛かってる。


『このままだと、またダメになるぞ?』



(それは嫌だ。それだけは…。)


どうしたらずっと傍にいられるんだろう?



そう考えているうちに、私は瞼が重くなっていった。

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