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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十七章】バレンタインデー
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【一琉視点】243

玄関に入り後ろ手にドアを閉めると、一気に脱力した。


「はぁ…」

扉に寄り掛かると自然と溜め息が漏れる。


(くそ…っ)


『もう、話せないと思ったら…悲しくなって』

つい先程の、優妃の泣き顔が頭をよぎる。


(優妃…)


なんで泣くんだよ…。

なんで、そんなこと言うんだよ…。


(馬鹿だよな、ほんと。…いやそれは僕の方か。)


あまりに滑稽で嘲笑してしまう。


もう関わるのはやめると、あの日(クリスマスの日)決めたくせに。

本人を目の前にしたら…やはりそれが出来なかったのだから。


―――そんな自分の、意志の弱さに嫌気がさす。


今日見ず知らずの他人から押し付けられたチョコの入った袋をドサッと玄関に置き、袋の中からひとつ何気なく手に取る。


(僕が本当に欲しいものだけは、手に入らない…)



口の中には、まだガトーショコラの味が残っていた。


((小さい頃)は毎年のように貰っていたのに…、いつからだろう?)


優妃からチョコを貰えなくなったのは…――――。


一気に口の中が、ほろ苦くなる。



(優妃はいま、幸せ…なんだよな…?)




優妃は中学校の頃、自分のせいで女子に妬まれ、いじめられるようになった。

優妃を…――僕の優妃を、他の誰にも傷つけられたくなかった。


護りたかった。


そう自分に言い訳をして、彼女を他の人間から孤立させた。


だけど本当はちがう。



―――“怖かった”んだ。


優妃が、誰かに心を開くのが。

誰かに心を奪われるのが。


だから誰にも近付けさせなかった。

僕の言葉が全てだと。

それが正しいと思い込ませて。


そうやって自分の手のなかに大事に閉じ込めておきたかった。




だから優妃を早馬朝斗(あいつ)に奪われたのも。


今感じてる、虚しさも。悔しさも。苦しみも。



これはその(● ●)罰なのかもしれない。




(だけど…―――)


彼女はしあわせそうに笑うようになった。

自分の気持ちを、口に出せるようになった。


(だから。…―――良かったんだ、これで)


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