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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十七章】バレンタインデー
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「香枝は、“これ”早馬に渡したのか?」

“これ”とフォークでお皿の上の残り少ないガトーショコラを指しながら先生が言った。


「え?」

それよりも、高梨先生からの突然の話題に私はつい聞き返してしまった。


クリスマスの後(あれから)うまくいったんだろ?早馬の話題は学校にいれば勝手に耳に入ってくるからな」


(え!?そ、そうなんだ?)

職員室にまでそういう噂が届いていたと知ったら、急に恥ずかしくなって私はうつ向く。


「これは渡してないですけど…、昨日トリュフを渡しました」

うつ向いたまま、私は先生に言った。

「あと…クリスマスの時、ありがとうございました」

軽く頭を下げて顔を上げると、不思議そうにこちらを見ている高梨先生と目が合った。


「ん?俺はなんもしてないぞ」

「え、そんなことないです!」


『早馬は香枝と付き合ってる時の方が幸せそうに見えたな』

『素直になれずにいたらタイミング逃すぞ香枝』


――――…あの時、先生がああ言ってくれたから…私は朝斗さんにぶつかっていけたんだと思う。


「私、先生の言葉に勇気を貰えたので」

「ふーん?」

先生はそう言うとフォークを置いて、翠ちゃんママの用意したコーヒーのカップを手に取った。


「じゃあ、ついでに言っておくが、」

ゆっくりとコーヒーに口をつけてから、先生が私を見据えて言った。


「このままだと、またダメになるぞ?」


(え?)

先生の言葉に、私は愕然としてしまった。


(“また”、“ダメになる”?)


「ちょっと先生、なに不吉なこと言ってんの!?」


翠ちゃんが驚きながら、私のためにそう怒ってくれた。

だけど先生は落ち着いていた。優雅な手つきでコーヒーカップを置くと、私の目を見て言った。


「早馬は、香枝以外見えてない。良く言えばそれは“一途”と言えるのかもしれない。だが早馬の場合は、…それとは少し違う気がするからな。」


「違う…?」


「お前がそれに気付いてやらないと、お互い後々大変だと思うぞ?」

先生がそう言って笑った。


―――だけど私は…笑えなかった。


それはきっと――――…。

私も心のどこかで…思っていたからだ。


引っ越しや、受験生という朝斗さんを取り巻く新しい生活環境への不安。

それを拭いたいがために、朝斗さんに自分の我儘を押し付けているのではないかという不安。

朝斗さんに無理をさせているのではという不安。


(そっか。やっぱり…間違いだったんだ…)

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