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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十七章】バレンタインデー
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「美味しそうにできたねー」

「冷ましたら、粉砂糖ふるって食べよ?」


朝斗さんが修学旅行へ出発したバレンタインデーの土曜日、翠ちゃんが家で一緒にガトーショコラを作ろうと誘ってくれた。


二人で作ったガトーショコラが、上手く焼きあがり、いい匂いが鼻をくすぐる。

エプロンを脱いで、翠ちゃんとガトーショコラを冷ましている間、リビングでティータイム。

美味しい紅茶をいただいていると、家の呼び鈴が鳴り、翠ちゃんママが玄関へと向かった。


「こんにちはー」

「カズくん!どうぞ、あがって?」


(!!)

その声が玄関から聴こえてくると、翠ちゃんがむせた。

「翠ちゃん?大丈夫!?」


翠ちゃんママと楽しそうに話しながら、高梨先生がリビングへとやって来た。

今日は髪型もラフだし眼鏡もない。それに何より笑顔を見せている。

クリスマスの時と同じで、今日はプライベートなんだなと思った。


(本当に、別人みたいで…慣れない…)


「な…、なんで先生がここに?」

驚きのあまりソファーから立ち上がった翠ちゃんに、高梨先生が微笑んで答えた。

「“葵さんから連絡貰ったから”、だけど?」


「ほらせっかくバレンタインだし、よかったらガトーショコラでもどうかしらと思って!」

両手をポンと合わせて、にこやかに翠ちゃんママが言った。


「お母さん、何勝手に…」

「あら、駄目なの?翠も誰かにあげる予定でもあった?」

優妃ちゃんみたいに、と付け加えられて私は顔が赤くなる。


「―――…あげればいいんでしょ、あげれば」


翠ちゃんママの言葉に、翠ちゃんは言い返すのをやめ、仕方なくという感じでキッチンへと向かい、ガトーショコラを切り分け始めた。


「はい。」

表面に雪が降ったみたいに粉砂糖をふるって白くなったガトーショコラを一切れ、可愛い柄のお皿に乗せて、フォークと一緒にリビングへと運んでくると、翠ちゃんがぶっきらぼうに先生の前に置いた。


「どうも」

先生は嬉しそうに微笑むと、フォークで一口分を口に入れる。


「美味しくできてるな!出来立てだからか?」

先生の言葉に、翠ちゃんが照れた。


(わ。―――なんか、可愛い…)

いや、美人で大人びている翠ちゃんに“可愛い”は相応しくないのかもしれないけど。

私はこの時、そう思った。


「ありがとう、(みー)ちゃん」

「みーちゃん言うな!!」


翠ちゃんと高梨先生のやり取りを見ながら、私は微笑ましく思いながら、羨ましく思っていた。


(朝斗さんに、逢いたいなぁ…)


まだ修学旅行初日なのに、寂しく思ってしまう私は…弱いのかな?

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