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「…優妃、大丈夫?」
同じベッド、同じ布団に身を寄せて横になっていると朝斗さんが私を抱き締めて言った。
「…大丈夫じゃないです」
恥ずかしさを隠そうと不満気な表情を作ってわざと朝斗さんを睨むと、見透かされたように笑われた。
「ごめん。」
「や、謝らないでください…」
(そんな、まったく怒ってないですから)
確かに痛かったけど。凄く痛かったけど。
でも、朝斗さんが見せてくれた私の知らなかった表情を独占できたあの瞬間、全部幸せに変わった。
だから…嬉しかったの。
―――もっと貴方を知れた気がして。
だけど、それは…恥ずかしいから言えない。
「ごめん。優妃痛がってたのに…。まだ…今日も途中でやめるべきだったよな…」
「・・・え?」
(今…なん…て?)
“途中でやめる”?
“今日も”?
え、じゃ…この間のは…?
私は考えながら、そのことに気がついた。
(そうだったのーーーっ?)
「―――ゆっくり少しずつ慣らしてからと思っていたのに、止められなくて…」
私が恥ずかしさに堪えられず布団で顔を隠していると、朝斗さんが嬉しさを噛み殺すような表情で言った。
「あー…ほんと俺自分勝手だったよな…。でもごめん、嬉しくて顔がにやける…」
(朝斗さんの顔が“にやける”?)
それは是非見たい。
と、隣の朝斗さんをチラ見すると、目が合った。
(だ、騙された…!)
照れたように口元を隠す朝斗さんは、にやけるというよりむしろ、いつもより爽やかなイケメンにしか見えなかった。
いまだに朝斗さんに見とれて、ドキッとしてしまう。
「やっとこうして、優妃と繋がれて嬉しいんだ」
私の手をとりきゅっと指を絡めながら、こめかみにキスをした朝斗さんがあまりに幸せそうに笑うから。
私は心臓がぎゅっとなって、一瞬息がつまった。
「朝斗さん…」
「愛してるよ、優妃…」
(どうしよ…。嬉しくて涙出てきた…)
「優妃…」
目尻にキスが降ってきて、目を閉じると今度は唇にキスが降ってきた。
「ん…、あっ…え?」
(あ、朝斗さん…?手が…――――)
慌てて朝斗さんを見上げた私に、朝斗さんが言った。
「…もう一回、してもいい?」




