【朝斗視点】231
昼休み後、優妃とランチをしてから戻ってきた俺は窓の外を眺めていた。
「お、朝斗。戻ってたのか!次の古典俺当たるからノート見せて」
予習済みのノートを手渡しながら、隣に座る琳護に
つい呟いていた。
「最近、優妃の様子がおかしい…」
「や、勘違いだろ。」
琳護が顔をあげると、すぐさまそう返してきた。
「優妃ちゃんはお前にぞっこんだし、お前は優妃ちゃんに夢中。はい、何も問題ない。爆発しろ」
―――後半は八つ当たりにしか聞こえなかったが。
「今朝はうれしそうだったのに、昼休みには塞ぎこんでた…。気付かれないようにしてるみたいだったから、敢えて触れなかったけど。」
生徒会は、やらないと伝えたのに。
何が優妃をあんな表情にさせてるのか。
それが分からない自分に腹が立つ。
知らないうちに傷付けた?
それともまた“彼女達”が?
「…先月も、そんな感じだった」
「あー、あれだ。マンネリじゃね?」
「は?」
琳護がまたテキトーな事を言い出した。
「お前引っ越したから、泊まりとかもできなくなって。そーゆー機会も無くなったからじゃね?」
一瞬、琳護の言葉を真に受けて、固まった。
――――いや、馬鹿か俺は。
あり得ないだろ。
「――――まさか。優妃だぞ?」
すぐに考えを常識的に改めてそう言うと、琳護が笑った。
「朝斗さぁ、優妃ちゃんがどんだけピュアだと思い込んでるのか知らんけど、放っといたら修学旅行中に、あの幼馴染みにまた盗られるかも…っ」
「ふざけんな、殴るぞ」
「ってぇな。殴ってから言うなよ!ってかその可能性あんのかよ」
琳護が不満気に俺を睨みながら、頭をさする。
(ない、とは言いきれない…)
俺は優妃が好きで。
優妃も俺を真っ直ぐ想ってくれてるのが分かって。
お互いその気持ちに、偽りはない。
誰も入り込めないくらい、お互いを想いあっている。
だけど、“幼馴染み”という存在だけは…ずっと…。優妃の中に、今もこれからも…あり続けるから。
(そこには、俺は入り込めないんだ…)
「修学旅行サボるか…」
「お前が言うとガチに聞こえるわ」
俺の独り言に、琳護が笑った。だけど俺は冗談で言ったつもりはない。
―――嫌なんだ。
優妃を失うのはもう。
少しでも離れたら、また君を失ってしまう気がして。




