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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十五章】好きだから
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【朝斗視点】231

昼休み後、優妃とランチをしてから戻ってきた俺は窓の外を眺めていた。

「お、朝斗。戻ってたのか!次の古典俺当たるからノート見せて」


予習済みのノートを手渡しながら、隣に座る琳護に

つい呟いていた。


「最近、優妃の様子がおかしい…」

「や、勘違いだろ。」

琳護が顔をあげると、すぐさまそう返してきた。


「優妃ちゃんはお前にぞっこんだし、お前は優妃ちゃんに夢中。はい、何も問題ない。爆発しろ」

―――後半は八つ当たりにしか聞こえなかったが。



「今朝はうれしそうだったのに、昼休みには塞ぎこんでた…。気付かれないようにしてるみたいだったから、敢えて触れなかったけど。」


生徒会は、やらないと伝えたのに。

何が優妃をあんな表情にさせてるのか。

それが分からない自分に腹が立つ。


知らないうちに傷付けた?

それともまた“彼女達”が?


「…先月も、そんな感じだった」

「あー、あれだ。マンネリじゃね?」

「は?」

琳護がまたテキトーな事を言い出した。


「お前引っ越したから、泊まりとかもできなくなって。そーゆー(● ● ● ●)機会も無くなったからじゃね?」


一瞬、琳護の言葉を真に受けて、固まった。

――――いや、馬鹿か俺は。

あり得ないだろ。


「――――まさか。優妃だぞ?」

すぐに考えを常識的に改めてそう言うと、琳護が笑った。

「朝斗さぁ、優妃ちゃんがどんだけピュアだと思い込んでるのか知らんけど、放っといたら修学旅行中に、あの幼馴染みにまた()られるかも…っ」

「ふざけんな、殴るぞ」

「ってぇな。殴ってから言うなよ!ってかその可能性あんのかよ」

琳護が不満気に俺を睨みながら、頭をさする。


(ない、とは言いきれない…)


俺は優妃が好きで。

優妃も俺を真っ直ぐ想ってくれてるのが分かって。

お互いその気持ちに、偽りはない。

誰も入り込めないくらい、お互いを想いあっている。


だけど、“幼馴染み”という存在だけは…ずっと…。優妃の中に、今もこれからも…あり続けるから。


(そこには、俺は入り込めないんだ…)



「修学旅行サボるか…」

「お前が言うとガチに聞こえるわ」

俺の独り言に、琳護が笑った。だけど俺は冗談で言ったつもりはない。



―――嫌なんだ。

優妃を失うのはもう。

少しでも離れたら、また君を失ってしまう気がして。

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