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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十五章】好きだから
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「優妃、バレンタインどーすんの?」


三時間目の体育を終え、教室へと戻る時に翠ちゃんが言った。

「あ、うん。作ろうかなと思ってるよ?」

ぽっと頬が赤くなるのを感じて、手で隠す。そんな私を横目に翠ちゃんが呆れた顔をして言った。

「じゃなくて、修学旅行でしょ?バレンタインの日」

「え、そうなの?」

「それも知らなかったの?」

私が聞き返したことに、翠ちゃんがさらに呆れた顔をした。

「うん…」

一緒に教室へと向かって歩いていた情報通の美樹ちゃんから話を聞くと、朝斗さんのクラスは、二月十四日から三泊四日で京都と大阪に行くらしい。


(全然、知らなかった…)


落ち込む私の隣から、ひょいと顔を出して明日香ちゃんが何気なく言った。

「“彼女”がいない隙に告られそうだよね!早馬先輩なら」

明るく言ったところからして、悪気はなくて。

むしろ、からかおうとしたんだろうけど。


(う゛っ…)


「明日香ぁ、今それ言っちゃダメでしょ」

凹み具合を察してくれていた翠ちゃんが明日香ちゃんにそう言ってくれたけれど、ぐさりと刺さってます、すでに。


「あ…。ごめん優妃ちゃん。でもさ、早馬先輩のことだからきっと全部断るでしょ」

「そうそう!優妃ちゃん一筋だもんね」

明日香ちゃんと美樹ちゃんが慌ててそうフォローしてくれる。だけど私はそれを、苦笑いで返すのが精一杯だった。


「・・・」

(―――だと、…いいけど…)


朝斗さんが私を想ってくれてるのは分かってるのに。

それでも不安になるのは、私が弱いから?

自分に自信を持てないから?


「・・・・」

朝斗さんのことばかりですっかり忘れていたけど、私なんかより可愛い先輩は沢山いて。

みんな朝斗さんの彼女が私であることに不満で。

ただ、それを面と向かって口に出さないだけで。

陰口だって言われているし、未だに痛いほどの視線を浴びているのに。


(私にできることは…ただ“信じて待つ”こと…?)


なにも起きませんように。

ただ何事もなく、朝斗さんが楽しんできてくれたらそれでいい。

私と朝斗さんの間に入ろうとする人がいなければそれで。


(ああ…まただ…)


例え環境が変わっても、お互いが想い合っていたら大丈夫だと…――――今朝は思えたのに。


(なんでそれが…こんなに不安なんだろう…)


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