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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十三章】家族関係?
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222

家に着くとちょうど玄関先に出てきていた母と朝斗さんが顔を合わせてしまった。


「あら、朝斗(● ●)くん!正月ぶりねー」

「はい。こんにちは恭子(● ●)さん」


「???」

(っ!?お互いいつの間にそんな、名前呼びに?)

私は目を丸くして、母と朝斗さんを交互に見る。


「なによ優妃。ぼさっとしてないで、ほら。朝斗くんも上がって上がって。今ね、牧さん家から美味しそうなクッキーいただいたの。食べてくでしょ?」

「お母さんっ!」

(なんでそう、いつも強引というか、ゴーイングマイウェーなの!?

朝斗さん、困るでしょ?)


「いいですか?ではお邪魔します」

「朝斗さん…」

(すみませんほんとに…。ほら…朝斗さん気を遣ってくれてるよ…、お母さん。)


「今、優妃の部屋まで持ってくわね。待ってて」

「ありがとうございます」


「朝斗さん?」

母と朝斗さんがにこやかに会話をした後、部屋に向かいながら私は訊ねた。


「ん?」

「なんで、あの…、母の名前…を?」

「ああ、メル友になったんだ」

「へ?」

(め、メル友?)

いつの間に連絡先を交換して。

いつの間に連絡し合ってたんだろう。


―――私の、知らない間に…。


「・・・・」

――――なんか、面白くない…。それに…。


「…もしかして、妬いてんの?」

朝斗さんが微笑んでいるのが、なんだか気に食わない。

「妬いてません!」

「ふーん…?」


なんでそんな愉しそうなんですか!

私の気持ち見透かしてるみたいに!!


じっと見返していると、朝斗さんが目を細めて微笑みかけてきた。

心臓がドキリと高鳴り、二人きりだから今なら…自分からキスできるかもしれないという不埒な考えが浮かんで一人で赤面してしまう。

(わ、私、なに考えてるの…!?)


「優妃、顔赤いけど大丈夫?」

朝斗さんがそう言って私の後頭部を引き寄せてコツンと額をくっ付けた。

心配性な朝斗さんが、にこやかにそう言ったのに違和感は感じた。だけどこれが“わざと”だったと気付いたのはその三秒後のことだ。


(これは…もしかして…キスするチャンス…ってこと?)

自分から少しだけ唇を上に向けかけたその時、やっぱりなタイミングで母が入ってきた。


「はい、お茶…―――あら?また邪魔しちゃった?」

「も!の、ノックしてよお母さん!あとそれわざわざ言わなくていいからっ!」


(み、見られた!見られた!?もう、消えたい!)


「あはは。もう来ないから許して?じゃあごゆっくり。なんなら夕御飯一緒に食べましょ?パパもいないし」

「あ、いえ。さすがにそれは」

母の言葉に、朝斗さんが遠慮する。

「あら?でも帰っても作らないんでしょう?朝斗くん、健康面もっと気を遣うべきよ?今は良くてもね…「もう、お母さん出てって!!」

口うるさいお母さんを部屋から追い出してドアを締め、ドアに寄りかかると自然とため息が出た。

(ほんと、なんなんだろ…うちの母親―――…)


「すみません本当に…口うるさくて」

「いや、“お母さん”みたいで嬉しいかも」


(う、嬉しい?あれが?)

「そ、うですか…?」

意外な反応に、私は戸惑ってしまった。


「優妃、お母さんに似てるよな」

「えっ」

ショックを受けて固まる私に、朝斗さんが本当に楽しそうに笑った。


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