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恋してるだけ   作者: 夢呂
第六章【勉強会の日】
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勉強会というから、勉強したら帰るものだと思っていた私は、 一時間後見事に浮いていた。


「でさー、詩織は健児と付き合い始めたらしいよー」


「へー、あいつらがねぇ」


「てかさー、私最近別れたんだよね」


「あー、例のサッカー部の先輩?」


クラスメイトの恋愛話やら自分の恋愛話やら。

どうして数学の勉強から、そんな話になったんだろう。

話に加わることは出来ないけれど、私はさっきから聞き耳を立てていた。


「手、止まってる」

翠ちゃんがこそっと言うので、まるで見透かされている気がして私は慌てて手を動かす。


「あー、もう雑談になっちゃってるし。私帰るわ」

翠ちゃんが皆にそう声をかけて、席を立つ。

「え、翠ちゃん…」

取り残された気分になった私は、すがる思いで翠ちゃんを見上げる。


「えー、帰っちゃうのぉ?」

クラスメイトの女子達も、そんな声をかける。


「うん。ごめん、ちょっと予定入ったし。またね」

引き留める皆にそう言って、翠ちゃんは帰っていった。




「あれは、オトコだね」

翠ちゃんが帰っていった後で透子ちゃんがボソッと言う。


(え、どういうこと…?)



「あ?マジか?」

男子たちが身を乗り出して透子ちゃんに聞き返している。


「あの翠と付き合える奴って、どんな奴だよ」


「案外近くにいたりしてなー」


「まさか」

皆が想像して盛り上がり始めた。


(なんか…こういうの…)

私がこの雰囲気にいたたまれなくなっていると、


「…くだらねぇな」

そんな空気を裂くように、一護くんが立ち上がった。


「帰るわ」

そう言いながら、テーブルの上に出ていたシャープペンをペンケースに仕舞う。

でも、それは私の…だったりするんだけど。


「行くぞ、優妃」


えっ?と声に出す前に、一護くんが私の鞄を持ちながらもう一方の手で私の腕を引いて行く。


(手、手、手――――――っ!)


突然の一護くんにの言動に動揺したけれど、それでも私は彼に抵抗することもできなかった。いや実際は…抵抗する理由がなかったから、そのまま一緒に店を出たのだと思う。


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