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「マジか。見えねーな、中学か小学生かと思ったわ」
冬哉くんはそう言って笑った。
笑うと口元から八重歯が覗いて、ちょっと幼く見えた。
「しょ、小学生は無理あるよ?」
「そりゃそーだろ。冗談だし」
「へ?冗談…?」
(なんなの…この人…よくわからない…)
受け答えに困っていたちょうどその時、朝斗さんから電話が掛かってきた。
―――…現在の時刻は12時。
補習授業は朝の9時から11時半までだと伝えてあったからかな?だとしたら、嬉しい。
「あの、私電話なので」
「ふーん。出れば?」
おずおずとそう伝えると、冬哉くんは席を立って行ってしまった。
なんだったんだろ…?
あ!
もしかして義兄の彼女だからこう…交流を深めようとしてくれたのかな?
だとしたら、嬉しいんだけど…。
『もしもし優妃?補習お疲れ。今帰り?』
「あ、えっと。学校近くのカフェ…」
(あ。カフェにいるって言ったらきっと次は“誰と?”って聞かれるよね…。三浦さんと話してたこと…言わない方がいいよね?)
「―――の、近くです」
『じゃあそこで一緒にランチ食おう?』
(ここで、ランチ…!?)
元旦以来、会えてなかったから嬉しくてにやけてしまう。
(わぁ、やったぁ!今から会えるなんて!)
嬉しいのとドキドキで、胸が騒がしく鳴る。
「…はい!じゃあ私、カフェの中で座って待ってても…?」
『分かった、寒いしな。入って待ってて』
「では!待ってま、るね」
敬語がいまだに抜けきれていない変な言葉で、私はそう伝えたのだった。




