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水曜日。約束通り、この間のメンバーで勉強会をすることになった。
学校の近くのファミレスに集まることになり、私は苦手な数学を持ってきていた。
「翠ちゃん、ここなんだけど―――」
「ん?」
私が解き終わった問題を、自信なく見せる。
「合ってる?」
「―――違う、やり直し」
私はさんざん悩んで解いたのに、翠ちゃんは少し眺めただけでそう言った。
「あ…はい。」
「ここ、」
翠ちゃんの細くて長い指が私の解いたノートの数字を指差す。
「よく見て、途中までは合ってるから」
(翠ちゃんって、本当に面倒見いいなー…)
同い年なのに、驚くほど大人びていて尊敬してしまう。
(どうしたら翠ちゃんみたいになれるんだろう…)
憧れの眼差しで見つめていると、クラスの女子が翠ちゃんの席の隣に座ってきた。
「―――みどりー、ここの問題教えて~」
「やだ。自分で考えな」
翠ちゃんはばっさりと、冷たく即答した。
「冷たーい」
「そんなんじゃ、彼氏出来ねーぞ翠」
「うっさい。余計なお世話だ」
さらにクラスの男子から茶々が入り、翠ちゃんは不機嫌になる。
「翠が好きになる人ってどんな男なんだろーねー」
「想像つかなーい」
クラスの女子たちがそんな会話を始めると翠ちゃんはファミレスの机に出していた課題を片付け始める。
「…勉強する気ないなら、帰る」
「あ、ごめんて!もう言わないから!」
皆が必死で謝りながら翠ちゃんを引き留める。
クラスの皆がそんな風に騒いでいる片隅で、座って頬杖をついたままの一護くんはぼんやりとそれを眺めていた。
そして何気なく私の方に視線を流して、ちょうど目が合う。
そして次の瞬間、無表情のまま目をそらした。
(あれ…避けられた?)




