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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十一章】元旦
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「ああっ!」


年越しそばならぬ、年越し済みそばを食べながら私は大変なことに気が付いた。


「忘れてた!私、昨日お母さんに電話…!!」

「大丈夫、俺がしておいたから」

慌てて立ち上がった私を見ながら、朝斗さんが言った。


「えっ!?大丈夫でしたか?変なこと言われたりとか…」

「ああ、うん…。――大丈夫」

目をそらして、朝斗さんが言った。


(・・・今の間は…何ですか…?)


「それより、朝の連絡した方がいいんじゃない?」

「あ、ですね!」

朝斗さんに言われて、私は慌てて自宅に電話する。


「あれ?出ない…」

母の携帯電話にもかけてみたが、出なかったので留守電にメッセージだけ入れておいた。

「もしもし、優妃です。あけましておめでとうございます。昨日寝ちゃって連絡しそびれてごめんね。では」


「―――…飲み過ぎて、まだ寝てるのかな?」

母ならあり得る。

「はは。まぁ、留守電に入れておいたんだし」

「ですよね」


席に戻って、残りのそばを食べようと口を開けたとき朝斗さんが言った。


「支度したら出掛けようか」

「え?」

「初詣に」


(朝斗さんと、初詣…っ!)


「はい!」

全力で答えると、朝斗さんが笑った。







「何気に初めてなんだよな、初詣」

家を出たところで、朝斗さんが言った。外は冷えきっていて風が吹くたび、頬が痛い。だけど私はそんな痛みなんて、なんとも思わないくらいウキウキしていた。


「そうなんですか!?」

朝斗さんの“初めて”をもらえて、私はますますご機嫌になっていた。


(新年早々、すごく幸せ!)


「じゃあ驚くかもしれないですね!凄い人ですよ」

「そうなんだ?人混みは苦手だな…」

私の言葉に、朝斗さんが少し眉をひそめる。


「離れたらすぐに迷子になりますからね!?」

私がそう言って笑うと、朝斗さんが目を細めて微笑んだ。

(ぅわっ!―――あ、甘い!!)

うっかり直視してしまった私は、慌てて目をそらした。

ボッと、一気に顔が熱くなる。


「どっちが?」

意地悪な笑みを浮かべて私の顔を覗き込んでくる。

「あ、・・・朝斗さんですよ…」

目を合わせないようにしながら答えるのがやっとな私を朝斗さんが愉しそうに笑う。


「じゃあ離さないようにしないとな」

いつの間にか繋がれていた手をぎゅっと握って、朝斗さんが微笑んだ。


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