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朝斗さんの部屋に入った途端、唇を奪われた。
そしてベッドに倒れ込み、朝斗さんが何度も何度も角度を変えてキスをする。
そして深くなった口付けから、解放されると今度は…―――首筋に唇が降りてくる。
「…ぁ」
どうしよう。
さっき一度覚悟を決めたはずなのに…、
なんか今になったら…
すごく…怖い…
器用に素早くワンピースの中に、朝斗さんの手が滑り込んできて、脱がせた私の肌に舌を這わせた。
「朝斗さんっ?せめて、んっ お風呂に…あっ…」
脚がガクガクと震え、声も…震えていた。下着姿にされ、恥ずかしさと緊張から身体が動かなくなる。
「優妃…」
ブラをずらしながら、朝斗さんが歯先をあてた。舌先で、転がすように、玩ぶ。
背中に寒気が走る感覚に、私は身体をブルッとふるわせた。
「優妃…好きだよ」
胸の先を突き抜ける刺激は、身体全体を巡りめぐって私を熱くさせ、甘く囁く声に絆される。
―――今だかつて、感じた事のない感覚。
(どうしよう、泣きそう。)
嬉しいはずなのに、なにも分からないから怖い。
幸せなはずなのに、不安が募る。
(矛盾してる…)
「あっ…ん」
この声が…、身体が…、自分じゃないみたいで怖い。
(大丈夫なの、私・・・これで―――…。)
目をぎゅっと閉じたまま、身体を強張らせていた私の頬に朝斗さんの手が添えられ、ゆっくりと目を開けた。
「優妃・・・」
朝斗さんが、優しく顔を覗き込んで言った。
「―――ごめん。もう、何もしないから」
・・・そう言わせてるんだって、分かってる。
私の震えが止まらないから。
涙が、…止まらないから。
「すみません、これは…違うんです。朝斗さん…続けてください、私大丈夫ですから」
私は涙を拭いながら必死に言った。でも、朝斗さんは優しく髪を撫でただけだった。
(――――その気にも、なれなくなった?)
なんで震えてるの?
なんで涙が止まらないの?
―――自分のことなのに、それが分からない。
「優妃がそう思ってくれたのが嬉しすぎて、暴走した。ごめんな。」
(朝斗さん…)
布団で身体を包んで、朝斗さんが布団ごと優しく抱き締めてくれた。
「ゆっくりでいいから、受け入れてくれる?」
「も、もちろんで…っ。うぅ…っ」
朝斗さんが優しくて、私は涙がまた止まらなくなった。
―――最後まで出来なくてごめんなさい。
だけどいつか、私も朝斗さんと同じように…気持ちと身体が追い付きますように…。




