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DVDを観終えたら、夕方になり部屋もすっかり暗くなっていた。
「晩飯どうする?優妃は何が食べたい?」
部屋の灯りを付けながら朝斗さんが言った。
「え?あ、でも紫さんが…―――」
「ああ、あいつ帰ってくるの遅いな。どこまで買い出しに行ったんだか」
私が言い終わらないうちに、朝斗さんが嘲笑した。
そんな朝斗さんの言葉に、私は(ああやっぱり知らなかったですよね…)と思いながら伝えた。
「あの…、紫さんなら“鍋作っておいたから温めて食べてね”って…」
なぜか朝斗さんの顔から笑みが消えたが、私は言葉を続けた。
「さっき部屋を出ていくときに言ってました…」
「・・・!!!」
明らかに、朝斗さんは驚いた顔をした。
(朝斗さんは紫さんが帰ってくると思ってたんですよね…)
「―――言うの遅くてすみません」
「いや、大丈夫」
そう即答しながらも、朝斗さんはまるで立ち眩みでもしたかのように額を押さえている。
(―――…そんなにショックだったんですか?紫さんが戻らないこと…)
なんだろう、嫉妬のような気持ちが私の心をぎゅっと締め付ける。
(私は…二人きりでも、嬉しいのに…)
「優妃は、いいの?」
不意に朝斗さんにそう訊ねられ、ドキンッと心臓がジャンプした。
(それって、それって・・・お誘いですよね!?)
心臓が、すごい勢いでドキドキと音をたて始める。
私は顔に熱が集まるのを感じながら伏し目がちに答えた。
「はい・・・。私はその、…全然大丈夫で…」
「―――優妃」
私の言葉をわざと切らせるような朝斗さんの声に、私は顔を上げた。
「鍋で、いいの?って意味で聞いたんだけど…?」
朝斗さんが口元を押さえながら、照れたように目をそらして言った。
「え゛っ!!?あ…っすみません私・・・っ」
(わーっ、また自爆したぁぁっ!!何口走ってるの私、何考えてるの、私!!)
顔から火が出て、消えたいくらい恥ずかしい。
朝斗さんに、下心がバレてしまった!というか、自らバラしてしまった!!
「・・・違ったらごめん。」
少し小さな声で、朝斗さんが言った。
「―――してもいいの?」
「・・・」
私は顔を上げられずにそのままコクリと下を向いて頷いた。
そして、自分を笑いものにするような口調で、正直に話した。
「すみません私、変ですよね。今日、そればっかり意識してて…本当はずかしひゃぁ…っ」
突然身体が浮いて、驚いた声が出てしまった。
「―――嬉しい…」
朝斗さんが私を抱き抱えて、幸せそうに微笑んだ。
(朝斗さん…)
朝斗さんが幸せそうに微笑むと、私も幸せになれる。
きゅぅぅんと胸が甘く締め付けられる。
あ、あれ?
―――だけど…朝斗さん?
どこへ行くのですか?




