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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十章】大晦日の過ごし方
253/315

203

DVDを観終えたら、夕方になり部屋もすっかり暗くなっていた。


「晩飯どうする?優妃は何が食べたい?」

部屋の灯りを付けながら朝斗さんが言った。


「え?あ、でも紫さんが…―――」

「ああ、あいつ帰ってくるの遅いな。どこまで買い出しに行ったんだか」

私が言い終わらないうちに、朝斗さんが嘲笑した。

そんな朝斗さんの言葉に、私は(ああやっぱり知らなかったですよね…)と思いながら伝えた。


「あの…、紫さんなら“鍋作っておいたから温めて食べてね”って…」

なぜか朝斗さんの顔から笑みが消えたが、私は言葉を続けた。

「さっき部屋を出ていくときに言ってました…」

「・・・!!!」

明らかに、朝斗さんは驚いた顔をした。

(朝斗さんは紫さんが帰ってくると思ってたんですよね…)

「―――言うの遅くてすみません」

「いや、大丈夫」

そう即答しながらも、朝斗さんはまるで立ち眩みでもしたかのように額を押さえている。


(―――…そんなにショックだったんですか?紫さんが戻らないこと…)

なんだろう、嫉妬のような気持ちが私の心をぎゅっと締め付ける。

(私は…二人きりでも、嬉しいのに…)


「優妃は、いいの?」

不意に朝斗さんにそう訊ねられ、ドキンッと心臓がジャンプした。

(それって、それって・・・お誘いですよね!?)

心臓が、すごい勢いでドキドキと音をたて始める。


私は顔に熱が集まるのを感じながら伏し目がちに答えた。

「はい・・・。私はその、…全然大丈夫で…」

「―――優妃」

私の言葉をわざと切らせるような朝斗さんの声に、私は顔を上げた。


「鍋で、いいの?って意味で聞いたんだけど…?」

朝斗さんが口元を押さえながら、照れたように目をそらして言った。


「え゛っ!!?あ…っすみません私・・・っ」

(わーっ、また自爆したぁぁっ!!何口走ってるの私、何考えてるの、私!!)

顔から火が出て、消えたいくらい恥ずかしい。

朝斗さんに、下心がバレてしまった!というか、自らバラしてしまった!!


「・・・違ったらごめん。」

少し小さな声で、朝斗さんが言った。

「―――してもいいの?」

「・・・」

私は顔を上げられずにそのままコクリと下を向いて頷いた。

そして、自分を笑いものにするような口調で、正直に話した。

「すみません私、変ですよね。今日、そればっかり意識してて…本当はずかしひゃぁ…っ」


突然身体が浮いて、驚いた声が出てしまった。


「―――嬉しい…」

朝斗さんが私を抱き抱えて、幸せそうに微笑んだ。


(朝斗さん…)

朝斗さんが幸せそうに微笑むと、私も幸せになれる。

きゅぅぅんと胸が甘く締め付けられる。


あ、あれ?

―――だけど…朝斗さん?

どこへ行くのですか?

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