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恋してるだけ   作者: 夢呂
【第三十章】大晦日の過ごし方
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【朝斗視点】202

はぁ…。


突然優妃がトイレに立ち、リビングに一人になったところで、つい溜め息を漏らしていた。


(パジャマまで持ってくるとか…)


優妃の母親にも既にオッケーを貰って来たことにも驚いたが、ここまで…―――。

(泊まる気、満々だったんだな…)


素直に喜びたいがまだ油断はできない。だからつい、苦笑してしまう。


手放しで喜ぶのは、紫が何を考えて優妃に泊まるように(こ れ を)仕組んだのかが分かってからだ。


確かに俺は昨日、大晦日に少しでも会えないかと誘った。それは今年も終わりだと思ったらなぜかたまらなく寂しく思ったからだ。

だが、こんな願ったり叶ったりの現実が逆に恐ろしく、いまだに戸惑っている。


(モコモコのパジャマとかかわいすぎるだろ…!)


思わず手に力が入り、カサ…と封筒の音で、それの存在を思い出した俺は優妃が戻らないうちに封を開けた。


わざわざなんだろう。

彼女の母から手紙なんて、ドキドキするな。


『今日は、優妃のことよろしくお願いします』

便箋に書かれた文字に温かさを感じていると、封からハラリと何かが落ちた。


「?」

足元に落ちたそれを拾おうとして、俺は手が止まった。


(―――――こ、)

「すみません、朝斗さんお待たせして。DVD観ま…」


優妃がリビングへ戻ってきたその瞬間、俺は今まで生きてきてこんな機敏に(かが)んだことはない程の速さでそれを拾った。


(・・・見られた?)


「朝斗さん?どうかしたんですか?」

優妃が不思議そうに俺を見つめる。大丈夫、いつも通りの優妃だ。

ホッとしながら、即座にそれをズボンの後ろポケットに突っ込んだ。


「いや、何でもない。DVD、観ようか」

「?」

安心させるように微笑んでみたが、優妃は少し不思議そうに俺を見つめていた。

そんな優妃からDVDを受け取ると、DVDプレイヤーにそれをセットするためを装い、ごく自然に彼女に背を向けて…―――背を向けたまま…必死に考えていた。


優妃の母から渡された手紙に同封されていた…――モノ(避妊具(ゴム))について。



これは、一体…どういう意図で?


―――分からない。

優妃の母は、優妃よりも分からない。

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