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「えっと、朝斗さん…まだ怒ってます…よね?」
ソファーに並んで座っている朝斗さんに、私は恐る恐るそう訊ねた。
「怒ってないよ」
(怒ってるじゃないですか!)
こちらを見ないまま、無表情な朝斗さんが…怖い!
「本当にごめんなさい!昨日…正直に言わなくて。でも私も、紫さんと同じ気持ちで…」
自分が今日着ていたワンピースのスカートに視線を落としながら話していて、はたと気がついた。
そっか。
私が昨日…黙っていたかったのは…。
紫さんに口止めされてたからだけじゃなくて…。
私も同じ気持ちで…―――。
驚くかな?とか、喜んでくれるかな?って。
私が来た時、どんな表情するのかな?って
私も、それが楽しみで。
「朝斗さんが喜んでくれるかなって…」
「・・・」
私の言葉が、朝斗さんの心に届いているのか分からない。
さっきからずっと、何も言ってくれないから。
(もしかして、やっぱり…迷惑だったのかな?)
そう思ったら、たちまち心がしゅうぅんと萎んでいく。
「紫さんから、カウントダウンパーティーの話されてから…私、勝手に浮かれてしまって…」
「優妃・・・」
朝斗さんが、少し戸惑うような声で私を呼んだ。私は恐る恐る、隣に顔を向ける。
「ひとつ、聞いてもいい?」
「はい。…?」
「…なんか…カバンがいつもより大きいけど、まさか」
私の持参したカバンの大きさに、朝斗さんが視線を向けながら言った。
(ひ、引かれてる…!?)
「え?あ、これは…その」
私は慌てて、この場を切り抜ける為の言い訳を考えた。
「ち!違うんです!このあとよ、予定があって!」




