表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十九章【カウントダウン】
244/315

195

「ただいまー」

玄関で靴を揃えながらいつものように自然と声をかける。


「お帰り」

声がしたリビングへと向かえば、母がニヤニヤしながら私の手に提げていたバックを見ていた。

私は即座に紙袋を後ろに隠す。


「お母さんっ!翠ちゃんに、変なこと頼まないでよ!もうっ」


(見られた、見られた、見られた…!!)

いや、中身は見られてない。でも、洗濯をしてくれてるのは母なのだからいずれ見られる。というか、黒幕はこの母なのだ、今さら隠しても仕方ない。

(って、分かってるのに恥ずかしいっ!)


「あら“変なこと”じゃないでしょ、“大切なこと”じゃない。いつまでもそんなお子ちゃまパンツじゃ、早馬くんに呆れられちゃうわよ?」


(お子ちゃまパンツ!?)


そう、洗濯をしてくれてるのは母なのだ。

だから普段の下着を把握していてもおかしくないわけで…。


(ぐ、ぐうの音も出ない…)


「お金、足りなかったかしら?」

黙りこんだ私をバカにするでもなく、母は微笑んで言った。


「うん。あ、でも…翠ちゃんがプレゼントだって」

「ふふ、本当に良い友達持ったわねぇ。なんていうか、男前よね、翠ちゃん」


―――――母は今、上機嫌だ。

だから私は、大晦日の話をすることにした。


「ところであの…、お母さん?」

「なぁに?」

「大晦日なんだけど、年越しパーティーしようって朝斗さんの従兄の紫さんに誘われてて。…あの、私行ってきてもいい?」

緊張からか早口になってしまった。


母は黙ったままで、私はごくりと唾を飲み込む。


「―――泊まりに行くの?」

暫くして、母が言った。思ったより、穏やかな声だった。

「うん…」

「その従兄の(かた)にご挨拶したいから、あとで連絡先教えて?」


「あ、うん。―――え?」

(ってことは、・・・良いの?)


「付き合ってるし、早馬くんには借りがあるしね。まぁパパには内緒にしといてあげるわ」

「お母さん…っ」

ぱあぁぁっと、部屋が急に明るくなった気がした。


(こんなあっさりオッケーが出るなんて!)


「但し!夜寝る前と、翌朝は連絡してくること!心配するからね」

「はい!」


母の言いつけに、私は浮かれながらも行儀よく返事をしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ