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「勉強会?」
家の前まで送ってくれた先輩に来週の予定を聞かれたので、私は唯一の“予定”を口にした。
「はい。今日遊んだ皆でやろうって話になったんです」
「そう。」
そんな素っ気ない返事をする先輩。気のせいかもしれないけれど…先輩が少しだけ不機嫌な表情になった気がした。
「先輩?」
「いや、優妃とどこか遊びに行きたいと思ってたけど、別にその日でなくても構わないから」
微笑みながら先輩が言う。手が私の頭を優しく撫でる。
(そ、それって―――ーで、デート!!?)
「す、水曜以外なら毎日空いてます!」
私には勉強会以外に予定はないのだから。
「そう。じゃあまた連絡する」
クスッと笑みをもらす先輩の表情は、なんだか妖艶で…見とれてしまう。
(本当に…なんで私なんだろ…)
私に背を向けた先輩。帰っていく先輩。
「あの…っ、」
気が付いたら、私は先輩を呼び止めていた。
「?」
振り返った先輩に、私は頭を下げる。
「あのっ、ありがとうございました」
「何が?」
「…会いに…来てくれて」
改まって口に出すと恥ずかしくなる。自爆した私は顔を赤くしたのがバレないように頭を下げたまま言う。
「あぁ、そんなこと」
なぜか先輩が口元を押さえて笑ってる。
「優妃って、本当に―――」
「?」
「いや、何でもない。じゃあね」
何か言いかけた先輩が、その続きを口にはすることなく帰っていく。
私は先輩の姿が見えなくなるまで、ずっと見送っていた。




