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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十七章【二人で挑む】
233/315

おまけ【母と娘】

「お母さん!」


朝斗さんを見送ってから家に入ると、母はキッチンで食器を片付けていた。


「あんなふうに家族のこと色々聞いたりして、失礼でしょ!?」

「あら、そうかしら?」

どうして、うちの母は…こんなあっけらかんとしているんだろう。

私は寿命が縮む思いだったのに。


「まぁ、そうね・・・。母親がいないっていうのは…寂しいでしょうね。早馬くん、ああ見えて色々苦労してるのね」


(“ああ見えて”って・・・)

お母さんに、朝斗さんはどう見えたんだろう―――。


(なんて―――本当は言われなくても分かってる。)


母の目に、朝斗さんはどう映っていたのか。

だって、彼に初めて会ったときの第一印象は、皆同じだと思うから。


そして、――――同時に思い出してしまった。

私が初めて朝斗さんを見た時の、あの時の気持ちを。


教室の窓から見える校庭に友達といた彼を、クラスの女子達がキャーキャー騒いで見ていた時。

私もそれにつられて、何気なく窓の外を見た…あの時。


なんて格好良くて、素敵な人なんだろうって。

彼だけが周りとは別世界みたいに輝いていて、眩しくて。

まるで、初めて本物の芸能人(アイドル)に遭遇した時のようにドキドキ鼓動が高鳴るのを知ったのも、この時で。

手の届かない人を、眺められるだけでドキドキして嬉しくて…。それだけで幸せを感じていた。


“早馬朝斗先輩”は、いつだって皆から注目されていたし、いつも余裕の表情で周りの期待に応えていた。それが、当然であるかのように。


(――――だからこそ、今、私は)


朝斗さんが私を頼ってくれたり、余裕のない表情を見せてくれると、こんなにも嬉しい。

そして何より、こんな私を好きだと言ってくれることが…本当に幸せで。嬉しい。


(あぁ…幸せ過ぎて!!どうしよう、もぉ…っ!)



リビングで一人悶えていると、片付けを終えた母が私の隣に来てソファーに座った。


「それにしても、優妃が…ねぇ」

「な、何?」

何か言いた気にニヤニヤしてる母に、私は少しびくつきながら訊ねた。


「別に?―――あ!浮かれてるのは分かるけど、避妊だけはしっかりしなさいね?」

「ひ、っ!!」

私は驚きのあまり、息を思いきり吸い込んでいた。


何を言い出すのかと思ったら!

あぁ、朝斗さんの前で言われなくて、良かった!

って、そうじゃないよね!?


「何よ、その反応。今更でしょ?」

「ちょ、お母さんっ!」


本当にっ!

どうしてそんなこと聞くかな、うちの母は!


赤面してうつ向いたままの私に、今度は母が驚いている。

「え、まだなの?なんだ、嘘ついてお泊まりなんてするからそうだと思っちゃうじゃないの」

「――――も、もぉ黙っててよ!」


「はいはい。早馬くんも、優妃に合わせてくれてるのね。…可哀想に」

「お母さんっ?」


お願いだから、もうその口閉じてくれないかなっ?


「でも優妃なら、早馬くんを飽きさせないかもね」

「え?」

母がそんなことを言うなんて意外で、私は真顔になって母の方を見た。


「ほら、美人は三日で飽きるって言うじゃない?」

母はにっこり微笑んでそう言った。


―――そうでした、母はこういう人でした。


(…なんで聞き返しちゃったんだろう私・・・)


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